藤守の田遊び(大井八幡宮)

【祭礼日】3月17日
【場 所】大井八幡宮(焼津市藤守686-1)

【日 程】11:00(内祭の儀)、15:00(外祭の儀・的射の儀)、18:00~22:30(田遊び奉納)

藤守は大井川河口の東側に位置し、大井川の氾濫による水害を恐れたこの地域の農民たちによって、延暦年間(782~806年)に水難防止の神として大井八幡宮が祀られ、平安時代の寛和年間(985~987年)に社殿が建立された折に「田遊び」が奉納されたのが「藤守の田遊び」の始まりといわれています。

田遊びは、年の始めに農民が行なう田畑耕作始めの儀礼で、稲の刈り入れとともに山へ戻られた田の神様に、新春を迎えて再び田畑への出番を促し今年の豊作を祈る予祝神事です。

藤守の田遊びは、明治までは旧暦正月17日に行われていましたが、明治6年からの太陽暦への改暦により祭礼日は2月17日になり、さらに戦後3月17日に変更され今日に至っています。

祭礼の中心となるのは、「四座(ヨザ)」「下禰宜(シタネギ)」「楽人(ガクジン)」と未婚の若者たち20~30人です。

四座は、神社に特に功績のあった者の子孫の戸主が務め、下禰宜は、祭礼用具を調える役で四軒ときまっていましたが、今は無く1人で務めています。楽人は、太鼓1人・笛数人で若者たちの芸能を指導します。

祭りは、3月10日「帳付けの儀」(田遊びの演者の名を記帳する)、3月14日「みそぎ」(藤守の浜でみそぎをする)、3月15日「水祝」(前年の田遊び以降に結婚した新夫を水で清める)、3月16日「御供練」(鏡餅・牛の舌餅を作る)、「お食いつぎ」(餅で餡を包んだものを食べる)、「御供納め」(深夜、神主・四座・若者などがお供えをする)などの行事を経て、3月17日に「内祭の儀」「外祭の儀」「田遊び奉納」が行われます。

今回は3月17日夜から行われる田遊び奉納を見学しました。

【演 目】番外:天狗、1番:長刀(ナギナタ)、2番:振取(フットリ)、3番:御獅子(オシシ)、4番:鍬入(クワイレ)、5番:荒田(アラタ)、6番:寄塗(ヨセヌリ)、7番:水口申(ミナクチモウシ)、8番:鳥追(トリオイ)、9番:山田、10番:徳太夫(トクダユウ)、11番:麦搗(ムギツキ)、12番:田植、13番:代草(シロクサ)、14番:孕早乙女(ハラミソウトメ)、15番:小編木(コザサラ)、16番:早乙女、17番:高野殿(コウノトノ)、18番:棒、19番:神子舞(カミコマイ)、20番:間田楽(マデンガク)、21番:猿田楽(サルデンガク)、22番:宝来(ホウライ)、23番:稲刈、番外:鯛釣、24番:長刀、25番:御獅子、番外:天狗

【衣 装】田遊びの演者は、濃紺地に水玉模様の長着姿に女児用の兵児帯数本を束ねて片襷し、濃紺の脚絆を着け白足袋・わら草履を履いています。動きが激しい演目では長着を尻端折りします。演ずる役により、白の狩衣(カリギヌ)の上衣を重ねて着たり、袴を着けたり、白の紙を七・五・三に切った紙幣(蓑を模す)を背負ったり、烏帽子や「ショッコ」を被ったりします。

ショッコは藁で作った円錐形の帽子で、ショッコの頂に付ける飾りには、五色の花や金銀の飾りを付けたもの(御獅子・棒)、長さ1m余の竹ヒゴ20本ほどに桜花を模した赤と白の造花を付けた「万燈花」を付けたもの(徳太夫・猿田楽)、田の字を模した五色の造花を付けたもの(間田楽)の3種があります。

【田遊び】本殿に隣接して3間四方の板敷の特設舞台が設けられています。田遊びの演者と同じ衣装の男児2人が、手桶の水を松葉に含ませ撒いて舞台を清めた後、田遊びが始まります。

[番外天狗]雄雌2匹の天狗が長さ3mほどの枝付き青竹を持って、左右に分れて舞台の四周を青竹ではげしく突つき清め鎮めます。天狗は、白の狩衣(カリギヌ)の上衣を重ね着し、天狗面を被り高下駄を履いています。

[1番長刀]若者2人が長刀で荒草を払う所作をし、農地の開拓を表します。

[2番振取・3番御獅子]2番と3番は同時に行われます。振取は、白の蓑を背負いショッコを被り、祭神の身代わりである御獅子を迎え、手に持つ白扇を振って慰めます。御獅子は、牛を象った白茶色の獅子頭に、眉・鬚・鼻毛として白の紙短冊が付けられ、胴幕には5人が入っています。

[4番鍬入]鍬入は、地に鍬を入れ田仕事の始まりを表します。若者2人が社前に向かって立ち、柳の箸に挿した「牛の舌餅」を捧げ持ち、「などようよう 鍬人れをしようずるは ひと鍬打ってひきおこせば よき酒とふる酒のにおいにおい」と三回唱え、牛の舌餅を箸から取って後ろに投げます。

[5番荒田]若者8人が手をつなぎ円陣を作り、「あらたのよしとし世よし 田を作らンば かの田よりますところおくところなし おほひおほひ苗を引く」「神権現(カミゴンゲン)の御神田(ゴジンデン)も千町万町 おんひらいたりや殿原(トンノバラ) おほひおほひ苗を引く」などと歌いながら左回りに跳ね踊り、神権現の御神田の田起こしを祝福します。

[6番寄塗]寄塗は、水田の水を保つため畦(アゼ)に土塗りをする作業のことです。4番と同じように若者2人が社前に向かって立ち、柳の箸に挿した「牛の舌餅」を捧げ持ち、短い唱え詞(コトバ)を3回唱え、牛の舌餅を箸から取って後ろに投げます。

[7番水口申]水田の水の取り入れが順調であって豊作であることを祈るものですが、現在は行われていません。

[8番鳥追]若者8人が手をつなぎ円陣を作り、左回りに跳ね踊りながら苗代の種蒔きを祝福し、つぎにその種をついばみに来る害鳥を追い払い、さらに稲の生長の諸段階に応じてそれぞれ妨害をする者を追い退けようとする歌を歌います。

[9番山田]舞台中央に置かれた厚い板で作った机状の台を「田圃(タンボ)」に見立てて、鍬を持つ若者5人が台を囲んで、一人歌いと五人歌いとを交互に繰り返し荒野開拓を物語ります。

[10番徳太夫]万燈花を付けたショッコを被り、白の蓑を背負い酒徳利を手にする徳太夫が、山田打ちの労をねぎらい「さんばい、さんばい、さんばい」と言いながら酒を振る舞います。

[11番麦搗]麦を搗く作業の苦労を歌うことではかどらせる内容ですが、現在は行われていません。

[12番田植]狩衣の上衣を重ね着し引立烏帽子(ヒキタテエボシ)を被り高下駄を履く殿が社前に向かって立ち、ショッコを被る供が殿の傍らにしゃがんでいます、殿は腰に帯びた太刀を左手で持ち、右手に酒瓶を載せた三方(サンボウ)を掲げ持っています。

白の鉢巻を締めた若者全員が、先端に紙垂の付いた竹の幣を持って殿と供をぐるりと取り囲み、殿が牛の祝福と田の祝福との詞(コトバ)を唱えます。次に、供の者が歌う田植歌の一句ごとに若者が竹の幣で舞台の床を叩いてはやしたてます。供の歌のあとは合唱となり、再び竹の幣で床を叩きます。

[13番白草]水田の除草を表したもので、4番と同じように若者2人が社前に向かって立ち、柳の箸に挿した「牛の舌餅」を捧げ持ち、唱え歌を述べ牛の舌餅を箸から取って後ろに投げます。

[14番孕早乙女]ショッコを深く被り腰に鼓を付けた若者1人が、鼓を打ちながら舞台を周回します。子孕みと稲の開花とを重ねて、子孫繁栄と秋の豊作を祈るものです。

[15番小編木]稲穂を荒らす鳥を追い払う舞で、袴を着け立烏帽子(タテエボシ)を被る若者2人が棒役の2人に肩車されて登場し、肩車から下りて鳥追役の歌と太鼓に合わせ柳の木で作ったネジリ木と竹ささらを摺り合せて舞います。

[16番早乙女]氏子中の5才になった男児が氏子入りする儀式で、5才を迎えた男児(今年は5人)がそれぞれの父親に抱かれて舞台に上がり、神主が男児を一人ずつ抱え上げ御神酒と牛の舌餅を授けます。男児は手拭いを頬被りし、頭の上に金紙で折った鶴を載せています。

[17番高野殿]稲の稔りが良いことを祝って、殿と供が問答をしながら酒を飲み交わします。14番と同じ衣装の殿が「いつにもすぐれて藤守の郷、富貴(フツキ)繁昌して物ぞよし ぞうんざ ぞうんざ」と言うと、酒徳利を持った供が「よう」と答える問答から始まります。

[18番棒]五色の花や金銀の飾りを付けたショッコを被り、白の蓑を背負う若者2人が六尺の樫棒を持ち、勇壮活発に振り回しながら踊り藤守の郷を守護します。

[19番神子舞]ショッコを深く被る若者1人が、笹ほうきで舞台四隅を祓い清めます。

[20番間田楽]立烏帽子を被り袴を着ける「オ取(サイトリ)」役と、田の字を模した飾りを付けたショッコを被り白の蓑を背負う若者7人が輪になって、笛と太鼓の囃子に合わせて左回りに跳びはねながら踊ります。稲の成長ぶりを表しています。

[21番猿田楽]万燈花を付けたショッコを被り白の蓑を背負う若者8人が、笛と太鼓の囃子に合わせて「ヘイソワ、ヘイソワ」の掛け声とともに、2列に分かれ蹲踞して両手を前に突き出し向き合ったり、立上り8人が手をつないで輪になって踊ったりします。田遊びの中で最も華やかな踊りです。

[22番宝来]青竹3本を組んで蓬来山とし、竹組みの中ほどに置いた締め太鼓を5人の若者が打ちながら神歌を歌います。

[23番稲刈]15番小編木と同じように、袴を着け立烏帽子を被る若者2人が棒役の2人に肩車されて登場し、肩車から下りてネジリ木と竹ささらで稲刈の所作をします。

[番外鯛釣]狩衣の上衣を重ね着し引立烏帽子を被り高下駄を履く若者が、舞台四方で本物の鯛を使って鯛を釣り上げる所作を行います。浜をもつ藤守ならではの漁師の豊漁を願う演目です。

[24番長刀]1番長刀と同じで、若者2人が長刀で舞台を薙ぎ払い清める所作をします。

[25番御獅子]2番御獅子同じで、振取が獅子を慰労し御獅子を送ります。

[番外天狗]最初の番外天狗と同じで、雄雌の天狗が舞台を祓い鎮めます。

 

舞台を水で祓い清める                          番外 天狗   

 

 1番 長刀                              3番 御獅子

 

4番 鍬入                              5番 荒田

 

6番 寄塗                        8番 鳥追      

 

  9番 山田                            10番 徳太夫

 

12番 田植                            13番 代草

 

14番 孕早乙女                           15番 小編木

 

16番 早乙女                          17番 高野殿

 

 18番 棒                            19番 神子舞

 

20番 間田楽                          21番 猿田楽

 

22番 宝来                            23番 稲刈

 

 番外 鯛釣                            24番 長刀

 

25番 御獅子                            番外 天狗

藤守の田遊び(田遊び)

藤守の田遊び(外祭の儀他)

祭りの栞(トップ)

 

inserted by FC2 system