下呂の田の神祭り(森水無八幡神社)(2013)

【祭礼日】2月13~14日
【場 所】森水無八幡神社(下呂市森1321)

【日 程】13日[試楽祭]19:00(テテ挨拶・踊り・斎食・獅子舞・禊酒=田の神会館)、0:00(禊=田の神会館前、籤取り=田の神会館)、00:45~02:00(踊り・神輿渡御・神移し=神社)、14日[本楽祭]8:00(門出=笠宿)、9:00(官祭・本楽祭=神社)、10:30(笠宿から下呂温泉合掌村へ行列)、12:00(御通夜番挨拶他・禊・獅子別れの舞=合掌村)、13:00(合掌村から神社へ行列)、13:30(田の神祭り神事・御旅行列・花笠踊り・寄進笠投げ=神社)、16:00(簓納め=田の神会館)

「下呂の田の神祭り」は、稲の豊作を予祝する中世以来の「田遊び」の芸能がそのもとになっているといわれ、国指定の重要無形民俗文化財となっています。

祭事は、7日の「テテ(神主)頼みの儀」から始まり、10日「踊り子籤(クジ)取りの儀」、11日「テテ挨拶・簓(ササラ)授与・踊り初めの儀」、12日「テテ振舞の儀」から13日試楽祭、14日本楽祭へと続きます。

今回は、神社で行われる本楽祭の午後からの行事を見学しました。神社拝殿前に着くと丁度、裃姿の3人が[赤白団子」を入れた小型の藁俵をそれぞれ両手に持って拝殿から出てくるところでした。祭りの後半で櫓の上から「寄進笠」「小竹箸(オタケバシ)」とともに投げるものです。

【田の神祭り神事】人が集まっている境内の一画に行くと、そこが「田の神祭り神事」の祭場でした。裃姿に太刀を腰に差した1人が注連縄が結ばれた大太鼓の前で神事開始の儀式を行います。八足(ハッソク)台には鏡餅に木の柄を刺した「柄鍬餅(ヒッカモチ)」4本を入れた盥(タライ)と小竹箸の束が置いてあります。

次に、先ほどの裃姿の人が榊の枝を捧げ持って先導し、赤の長着姿に黒の幅広の襷と帯、赤の手甲を着けた4人が、祭場入口に置かれた柄鍬餅をそれぞれ肩に担いでいかにも重いという所作をし、後ろの付き人がこれを支えながら入場します。

大太鼓に榊の枝が置かれ、これを囲んだ赤の長着の4人は、柄鍬餅で大太鼓を打っては柄鍬餅を肩に担ぎ半廻りし大太鼓を打つ所作を繰り返します。この時「春くれば、まず花米をうちまきて、皆人よかれと祝こそすれ・・・」と「田の神祭りとなえ詞(ウタ)」8曲を唱えます。「田打ちの儀」です。赤の長着の4人は「花笠踊り」の踊り子です。

【御旅行列】「田打ちの儀」が終わると、獅子の行列が境内広場をゆっくりと二周し、二人立ちの獅子2頭は笛8人・締め太鼓2台の囃子に合わせて舞います。三周目は白丁(ハクチョウ)姿の12人に担がれた神輿も行列に加わります。最後に獅子が拝殿前で舞を奉納し退場すると神職・神輿・稚子は拝殿の中に入ります。

拝殿で神輿還御の式典の後、紺の裃姿の囃子方が笛・太鼓で囃す中、神輿は拝殿から神輿蔵に移されます。次に、祭り半纏を着け寄進笠を両手に持った20人ほどが「寄進笠の拝み」の後、もみ合います。「寄進笠の喧嘩」だそうです。

【花笠踊り】次に、テテを先頭にして花笠踊りの踊り子4人が入場し拝殿前で花笠踊りを奉納します。テテは、緑の狩衣(カリギヌ)・白の指貫(サシヌキ)袴姿に烏帽子を被っています。踊り子は、赤の長着の上に片肌を脱いだ白の長着を重ね、黒の幅広の帯を締め花笠を被り赤の手甲を着けています。

拝殿の階段下には「田の神歌」の歌本を手にした20人ほどの裃姿の歌方が控えています。

花笠は竹ひごで骨組みを作った直径70~80cm、深さ30cm余の大きな笠で、笠の上部に稲穂を表す赤の紙を束ね、笠の表全面に稲束を表す無数の赤の細い紙片を付けています。加えて笠の天辺からは大きな白幣1本が垂れ下がっています

顔が当たる部分を除く笠の全縁には、内側から順に黄・赤・白の紙でそれぞれ蚕(黄)、桑葉(赤)、稲葉(白)を象った紙を垂らしています。

テテと踊り子の5人は横一列になって簓(ササラ)を摺りながら踊り、歌方は冬の歌・春の歌・鶯の歌を順次唱和し鶯の歌の三首目が終わると、踊り子の警護役4人は花笠をたたみ、自分の首に巻いていた赤の布で花笠を包んで踊り子の胸の前に置き背の後ろで布を結びます。

これで踊り子は花笠を懐中に納めたことになります。これは踊り子を早乙女と見立て早乙女が子をはらんだ姿を表しているそうで、稲の穂ばらみを表しているともいわれます。

踊り子が花笠を懐中に納めている間に、櫓の上から寄進笠が参拝者に投げられます。続いて赤白団子・小竹箸も投げられます。寄進笠は花笠を小振りにしたもので直径30cm、深さ25cmほどで、これを拾い神棚に祀ると養蚕農作が豊作であるとされています。

寄進笠投げが終わると参拝者の大半は帰ってしまいますが花笠踊りは続きます。花笠を懐中に納めた踊り子は、向きを変え互いに向きあったり外側を向いたりして、田植え・稲刈り・穂摘み・穂摺(ホスリ)落としなどの所作を演じ踊ります。

 

田の神神事祭場                                餅かつぎの儀

 

     田打ちの儀                                御旅行列(神輿)

    

御旅行列(囃子方と獅子)                          寄進笠の喧嘩     

 

踊り子とテテ                                  寄進笠投げ

 

花笠を懐中に入れて踊る                             歌 方  

田の神祭り(2013年本楽祭)

田の神祭り(2020年試楽祭)

田の神祭り(2020年本楽祭)

 

  

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