程野の霜月祭り(程野正八幡宮)

【祭礼日】12月14~15日
【場 所】程野正八幡宮(飯田市上村程野103)

【日 程】14日11:00~15日7:00

遠山郷の霜月祭りは現在12月に行われていますが、かつては旧暦霜月(シモツキ)11月に行われていました。最も太陽の光が弱まりあらゆる生命の力が衰えるといわれる旧暦11月に、諸国の神々を招いて湯を立て湯を献じ、自らも浴びることによって神も人も生まれ変わるという信仰に基づく祭りです。太陽が沈む夕刻に神々を迎え、一夜を徹してもてなし夜明けに神々を返します。

遠山郷の霜月祭りには上町(カミマチ)・下栗(シモグリ)・木沢・和田の4タイプがあり、程野の霜月祭りは上町タイプで、神事に先立ち般若心経を唱えたり、神々を招くにあたり印を結び、仏に加護を祈ったりするなど神仏混淆の姿が色濃く残されています。囃子は大太鼓1人と笛数人です。

舞殿には土と藁で作られた竃2口があり、本殿に向かって右を一の釜、左を二の釜と呼んでいます。竃の上には「湯の上飾り」が吊り下げられています。

【式次第】1.式礼、2.座揃い、3.七五三引き、4.神帳、5.申し上げ、6.釜祓い神楽、7.両大神の湯、8.正八幡の湯、9.四つ舞、10.初参り、11.願湯、〔願ばたき〕12.湯の華、13.一之宮・若宮の湯、14.一倉玉善権現の湯、15.鹿島大神の湯、16.天照大神の湯、17.小野之明神・堺之明神の湯、〔お蔵開き〕、18.四つ舞、〔お蔵開き〕、19.舞台祓い、<夜食>、20.御一門の湯、〔面改め〕、21.襷の舞、22.羽揃えの舞、23.寄り湯、24.鎮めの湯、25.日月の舞、26.面(オモテ)の舞、27.神返し、28.宮閉じ

昨年は、14日12時から「座揃い」の途中から15日朝6時の「神返し」まで見学しましたが、パソコン故障のため撮影写真を失くしたので再訪し、今回は14日16時から11番の「願湯」から見学しました。

11.願湯 先湯(7番両大神の湯=政王大神・源王大神の湯立)・20番御一門の湯・24番鎮めの湯とともに「役湯」であるため、最初に「五大尊」の儀式が行われます。

竈の正面に禰宜4人が座り塩で清め、火打ちの石を右手に持って火打ちの呪文を唱えた後、火打ち石で火を切ります。

「そもそも、この御火打ちと申し奉るは、天竺三條小鍛冶宗近の打ちたる火打ちなり、古火去りて新火栄え栄えと敬って申す。アビラウンケンソワカ」

次に、印を結び五大尊の呪文を唱えます。

「そもそも謹請東方には降三世夜叉明王と申して、木の玉を持ちて前に立ち切り守らせ給う。そもそも、謹請西方には、大威徳夜叉明王と申して土の玉を持ちて後に立ち切り守らせ給う。・・・」

これを竈の東南西北中の五方に移動して行います。その後、禰宜4人が「産土(ウブスナ)の舞」「湯木の舞」「湯殿渡し」「湯召し」の順で舞います。

産土の舞では右手に鈴を左手に扇を持って舞い、湯木の舞では右手に鈴を左手に湯木を持って舞い、湯殿渡しでは湯木を二つに割って両手に持って舞います。

最後の湯召しでは、禰宜が湯木2本をまとめて右手で持って釜の湯に浸し、「梵天大社へお湯召」と唱えると氏子衆が「お御影こそは くんもと昇れ」と答えます。順次「神名」を呼び上げ繰り返して「宮天伯」で終わります。

〔願ばたき〕 願湯と並行して、禰宜・氏子総代が釜の湯を柄杓に汲み上げて願ばたきの立願家に持参し、その家を清め願が達せられたお礼を申し上ます。

〔お蔵開き〕18番四つ舞の頃、禰宜・氏子総代がお蔵を開け、面が入っている納め箱を社殿に移し面を迎えます。

〔面改め〕 20番御一門の湯の頃、禰宜・氏子総代が面・付属品などに異常が無いか点検します。

21.襷の舞 着物・袴姿に錦の襷を片掛けし錦の鉢巻を横結びした4人が、右手に鈴を左手に扇を持って竈の前と後に2人ずつ分かれて舞います。次に、右手に鈴を左手に抜き身の太刀を持って、輪くぐり・飛び切りなど勇壮に舞います。

22.羽揃えの舞 留め袖姿にお太鼓を前に帯を締めた女装の4人が、竈の前と後に2人ずつ分かれて舞います。最初、2人は重なって一組になり右手に持った扇を一つに重ねて竃を周回し、次に、竃を挟んで4人が向かい合って舞います。

24.鎮めの湯 11.願湯と同じように五大尊・産土の舞・湯木の舞・湯殿渡し・湯召しを舞います。湯召しが終わり禰宜が鎮めの詞を唱えると、氏子が裏を唱えます。

(オモテ)「川水神へ お湯召するときは くんもと昇れ」「静かなれ 静かなれ 千 静かなれ」

(ウラ) 「深山の紅葉も 千 静かなれ」

25.日月の舞 今夜招待した神々を返すための舞で、紺の長着・水干姿に烏帽子を被る若者7人が

「おん日月の いまゆましますな ヤンヤーハーハー 大空へ 粕毛(カスゲ)の駒にな ヤンヤーハーハー 手綱よりかけ」

と歌い舞います。次に、竃の正面で鈴を鳴らしながら「御座の神」の詞を唱えます。

26.面の舞 神太夫夫婦・八社の神・四面(ヨモテ)・宮天伯(ミヤテンパク)の15の面が登場します。

神太夫:津島の神大夫夫婦が伊勢参りの途中、正八幡宮に立ち寄り村人と問答の末、津島に帰ると云う筋で、太鼓と伊勢音頭の囃しで舞います。

八社の神:江戸時代初期に滅んだ遠山土佐守一族を表わし、男神7神は裃姿に烏帽子を被り鈴と扇を持ち、女神一之宮は着物姿に綿帽子を被り扇を持ち、それぞれ竃を2周します。

四 面:紺の小袖・縦縞の袴姿に青・白・赤の鼻高面を着けた4人が登場します。最初に、青面の「水王」が一の釜の前に立って小袖を肩まで捲り上げ、煮えたぎる釜の湯を右手で湯切りします。次に、同じように白面の「土王」が二の釜の湯を右手で湯切りします。

次に、白面の「木王」と赤面の「火王」が登場し、水王・土王とともに四面が、舞殿の四隅で「ヨーッセ、ヨーッセ」と囃す観衆の中へ跳び込みます。

宮天伯:赤の狩衣・金色の袴姿に鬼面を着け紅白の布を巻きつけた弓と鏑矢(カブラヤ)を持ち、釜の前で東西南北天地に向かって矢を放ち悪鬼外道を追い払う所作をします。次に、「天下泰平、国家安全、五穀豊饒、目出度く叶う」の唱え詞に応えて、顔で「叶」の字を書きます。

27.神返し 禰宜2人が竃の正面に立ち、湯を汲んだ柄杓と祓い幣を持ち、東南西北中央で神返しの詞を唱和します。

「そもそも謹請東方、東は日の本富士浅間、今夜このみ注連の上に、招じ勧請申し奉る。仏千体神千体、ぶるい眷属一社も残らず元の社の元の本宮へしっかとお送り申し奉る。叉もごされよ、請う明年も神迎えしたら神栄えして。・・・」

 

        囃子方                          願湯(五大尊・火打ち)

 

  願湯(産土の舞)                         願湯(湯木の舞)

 

願湯(湯召し)                             願ばたき  

 

お蔵開き                                面改め

 

  襷の舞(扇)                          襷の舞(太刀)

 

羽揃い之舞

 

鎮めの湯(五大尊・火打ち)                   鎮めの湯(湯殿渡し) 

 

日月の舞

 

 神太夫(翁)                           神太夫(婆)

 

八社の神(政王大神・源王大神)                  八社の神(一之宮)    

 

水 王                                 土 王

 

「ヨーッセ ヨーッセ」と囃す                         木 王         

 

火 王                                  宮天伯

 

宮天伯                                 神返し

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