例祭(小川若宮神社)

【祭礼日】4月最終金~日曜日
【場 所】小川若宮神社(木曽郡上松町小川3020)

【日 程】金曜日19:00~22:30(芸習い=集会所)、土曜日5:30~(悪魔払い=地区巡行)、日曜日午前中(悪魔払い=地区巡行)、14:00~15:30(獅子狂言=若宮神社)、15:45~24:00(悪魔払い=地区巡行)

4月最終土~日曜日に行われる小川若宮神社の例祭では、獅子と神楽屋台が地区を巡行する「悪魔払い」と神社での「獅子狂言」の奉納があります。また例祭の前夜には集会所で「芸習い(ゲイザライ)」として獅子狂言が披露されます。いずれも「小川里若連中」の若者によって行われています。

今回は、日曜日の悪魔払いと獅子狂言を見学しました。

【悪魔払い】昼前にJR上松駅から小川橋を渡って島地区に入った所で地区を巡行している悪魔払いの一行を見つけました。悪魔祓いは、神楽屋台とともに二人立ちの獅子が地区の家を一軒ずつ獅子舞を演じ、土日の2日間かけて全戸を廻るのだそうです。

小川里若連中の若者は、紺地に「小川」の文字を題材とした日月の模様と馬の模様を白抜きし散りばめた着物に黒の帯を締め白足袋・草履を履いています。獅子の胴幕も小川里若連中が着用する着物と同じ柄です。

神楽屋台は、担ぎ台の上に大太鼓と締め太鼓が据えられその上に大振りの紙垂(シデ)を重ね、さらにその上に二層の傘が据えてあります。それぞれの傘の下には三角の丁子袋(チョウジブクロ)(匂い袋)がびっしりと吊り下げられています。初めて見るユニークな屋台です。

神楽屋台の大太鼓・奏者が胸に付ける締め太鼓・笛数人の囃子に合わせて、右手に鈴を左手に御幣を持って獅子が舞いますが、家の前だけではなく、家の座敷に上がって舞ったりします。座敷では一人立ちの獅子になり獅子狂言のさわりなどを舞います。

1時間ほど悪魔払いを見学した後、獅子狂言が奉納される小川若宮神社に向かいました。急坂を30分ほど上がると山の中腹にこんな広場があるのかと思うほど広い境内を持つ若宮神社に着きました。

獅子狂言の奉納に先立って拝殿で神事が行われ、この中で笛と太鼓の囃子に合わせて、宮司が右手に鈴を左手に笹束を持って舞います。

【獅子狂言】獅子狂言は、女物の着物を着た獅子と他の若連中が役者となって歌舞伎などを演じる獅子芝居です。今年の演目は「天の岩戸」「五斗大酒」「梅川と忠兵衛」「忠臣蔵三段目」「葛の葉・子別れの段」の五つです。

「五斗大酒」は、大酒飲みの五斗兵衛(後藤又兵衛)の才能を見込んだ泉三郎(真田幸村)が、兵衛を義経(豊臣秀頼)に引き合わせようとするが、これを快く思わない悪臣が兵衛に大酒を飲ませ兵衛は出世の機会を失い、妻関女(セキジョ)からも離縁を迫られる・・・という浄瑠璃「義経腰越状(ヨシツネコシゴエジョウ)」をもとにしたものです。

「梅川と忠兵衛」は、飛脚問屋の忠兵衛が恋仲になった遊女梅川を身請けするため預かった公金に手を出し処刑され、梅川は近江で懺悔の日々を送るという近松門左衛門の戯曲「冥土の飛脚」をもとにしたものです。

一番人気は最後の「葛の葉・子別れの段」です。あらすじは次の通りです。

『河内国阿倍野の豪族「阿部保名(アベノヤスナ)」は、許嫁の「榊の前」が無実の罪に問われ自害したことを苦に気が狂い、迷い込んだ和泉国信太(シノダ)の森で狐を助け、その狐が榊の前の妹とそっくりの「葛の葉」に変身して、保名の狂気を癒し二人は結婚して男子を生みます。

そこへ、本物の葛の葉とその両親が訪ねてきたので狐の葛の葉は観念して、保名らの愛着を断ち切ろうと狐の姿に戻って消えてしまいます。狐の葛の葉がいた部屋の障子に別れの歌が書かれていました。』

子供を背負った獅子が、神楽屋台に立て掛けた畳1枚ほどの紙に手を使わず口に咥えた筆で

「恋し具波(恋しくば) 尋弥来て見よ(訪ね来てみよ) いつミ那流(いずみなる) 志乃多能森能(信田の森の) 宇羅ミ葛葉(うらみ葛の葉)」

と書きます。しかも歌の「いつミ那流」は下から上に書き、「志乃多能」は裏返しの文字で書き、「森能」は横書きでさらに裏返しの文字で書きます。

獅子が別れの歌を書き終えると獅子狂言の解説があります。小休止の後、獅子と神楽屋台は急坂を下りて悪魔払いの巡行に出かけます。

「葛の葉・子別れの段」の獅子芝居は、愛知県新城市の「名越(ナコエ)神楽」でも行われ、同じように獅子が口に咥えた筆で別れの歌を書きます。

 

 悪魔払い                               獅子狂言

    

神事(若宮神社)                           天の岩戸   

 

梅川と忠兵衛                            忠臣蔵三段目

 

葛の葉

   

葛の葉

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