寒水の掛踊り(白山神社)

【祭礼日】9月第二日曜日とその前日
【場 所】白山神社(郡上市明宝寒水(カノミズ)1203)

【日 程】土曜日〔試楽〕10:30(化粧・衣装付け=掛踊伝承館)、12:20(打ち出し=中桁家)、12:50(中桁前の踊り=中桁家の庭)、13:50(白山神社へ出立)、14:50(お庭踊り=神社)、16:40(拝殿前の踊り=神社)、日曜日〔本楽〕打ち出し以降の開始時間が前日より10~20分早まり、17:20~18:00(踊り納め=神社)

「寒水(カノミズ)の掛踊り」は、宝永6年(1709年)隣村の母袋(モタイ)村から寒水に伝わったとされ、明治の末頃までは毎年掛踊りの日に母袋村から声自慢の数人が峠を越えて来て、社前で寒水の人たちと歌の掛け合いを行い一緒に踊っていたといわれます。

掛踊りは明治中頃までは、旧暦8月1日に奉納され「八朔(ハッサク)祭り」とも呼ばれ、その後、新暦の9月8日(試楽)・9日(本楽)に行われるようになりました。今回は、昨年に続いて9月8日の試楽を見学しました。(その後、開催日はさらに9月第二日曜日とその前日に変更されています)

祭礼当日、諸役の奉仕者は掛踊伝承館で化粧・衣装を整えて、世襲の踊り宿である中桁(ナカケタ)家に集まります。諸役のうち、「折太鼓」3人と「鉦引き」1人は、中桁家で衣装を整えます。

【拍子打ち】折太鼓と鉦引きを総称して「拍子打ち」と呼んでいます。

折太鼓は、白地に紺の檜垣(ヒガキ)模様入りの半切り・縞模様の袴姿に赤の襷・白の手甲・鉢巻を着け、蝶をかたどった兜を被り、胸に太鼓を付け「シナイ」を背負います。シナイは、造花で飾った長さ3.6mの竹ヒゴ8本を一列に並べ桶に挿し込んだものです。

鉦引きは、折太鼓と同じ衣装で胸に鉦を付けています。拍子打ちは、準備が整うと中桁家の居間に横一列になって座り、合わせ打ち(打ち出し)を行います。

【行 列】打ち出しの後、諸役は中桁家の勝手口から列を組んで道路へ出て、中桁家に庭入りします。

行列は、露払い・禰宜・鍵取り・御供・出花(ダシバナ)・神幟・悪魔払い(赤鬼)・薙刀振り(青鬼)・音頭3人・折太鼓・鉦引き・笛吹き10人・ササラ摺り6人・田打ち12人 ・大黒舞2人・大奴12人・地歌頭・地歌(踊り子)・花笠4人・おかめ踊り2人・大傘・踊り幟4本などの順で進みます。

出花は、長さ2mの竹竿の上に付けた直径50cmほどの藁籠に、造花で飾った竹ヒゴ64本を挿したものです。

笛吹きは、裃姿に鶏兜を被っています。ササラ摺りは女装した男児で、顔化粧し水色(頭は青色)の小袖姿に黄の帯を締め、花笠を被りササラを持っています。花笠は、饅頭笠の縁を赤と金の色紙で、頂上を五色の紙で飾ったものです。

「田打ち」は、天色(アマイロ)の半纏・白の股引姿に鉢巻をし、作り物の柄の短い鍬を持っています。鉢巻は、四つ折りにした白の布を頭に巻きその両端を立てて下へ垂らした特異なものです。

大奴は、顔を隈取り化粧し、紺の半纏・股引姿に縄の鉢巻きを締め、はやし棒を手に持っています。地歌頭・地歌は小袖・袴姿に一文字笠を被っています。

「花笠」は女装した男児で、顔化粧し紅赤の小袖姿に花笠を被っています。花笠は五弁の梅の花の中央に松・梅・桜などの12ヶ月の花をそれぞれ1本ずつ立てます。本来は12人の役人(ヤクビト)が必要ですが今年は4人しかいませんでした。

諸役にはそれぞれ世話役が付き添うので、行列の総勢は100人ほどになります。村総出の祭りで、家には赤ちゃんと子守りのお年寄りしか残っていないそうです。

行列の最中には、笛と拍子打ちの囃子が奏されます。囃子には「しゃげり」「妙見拍子」「おかざき」「こしずめ」「十六拍子」「七つ拍子」「三つ拍子」の7曲があり、囃子は途切れることなく奏されます。

【中桁前の踊り】行列は中桁家に庭入りすると、拍子打ちの4人を中心にして庭一杯に円陣を組んで「中桁前の踊り」を奉納します。

最初に、世話役の「ヨォーオ」の掛け声を合図に太鼓と鉦だけの拍子が続きます。これを「歌がしら」といいます。

歌がしらが終わると、音頭が天下泰平・五穀豊穣を願う歌の一節半を歌い、地歌頭と地歌がそれぞれ同じ一節を繰り返します。次の節に移り、同じように音頭が歌い地歌頭・地歌がそれぞれ歌い返します。この歌の掛け合いが繰り返され、最後に「しずめ歌」が歌われます。

中桁前の踊りは1時間ほど続きます。これが終わると再び行列を組んで、笛吹きと拍子打ちが囃子を奏しながら、神様道と呼ばれている旧道を通って1Kmほど離れた白山神社に向かいます。途中、20分ほど道端で休憩します。

【お庭踊り】神社に着くと拝殿を一周し拝殿前の庭で大きな輪を作り、輪の中心に拍子打ち4人が立ち、中桁前の踊りと同じように「お庭踊り」が50分ほど奉納されます。悪魔払いと薙刀振りは、踊りの輪の外で役人と見物人との間を整理・警護し、大黒舞は、踊りの輪の中で役人とともに踊ったりします。

田打ちは、「十六拍子」「七つ拍子」「三つ拍子」の際、腰を深く曲げ短い柄の鍬を地に突くようにして田畑を耕す所作をしながら踊ります。ササラ摺りはササラを摺り合わせながら踊り、大奴は両手に持つはやし棒を振りながら踊ります。いずれも左回りで踊ります。

【拝殿前の踊り】お庭踊りが終わると、諸役は一の鳥居の外へ出て1時間ほど休憩します。その後、行列を組んで拝殿の庭へ繰り込み「拝殿前の踊り」を奉納します。

拝殿前の踊りは、中桁前の踊り・お庭踊りに比べてテンポがはやく、体を折り曲げながら背負うシナイを地面に擦り付けるようにして30分ほど踊ります。田打ち・大奴などの動きも激しくなります。

本楽ではこのあと「踊り納め」があり、役人に見物人も加わって大きな輪をつくり、「寒水輪島」「よいよい」「どじよう」の手踊りが行われるそうです。

 

打ち出し(中桁家)                      大奴と大黒舞          

    

    花 笠                   音頭と拍子打ち

 

悪魔祓い                                笛吹き

 

ササラ摺り                                田打ち

 

   大 奴                               中桁前の踊り

 

          中桁前の踊り                   白山神社へ向かう(出花と拍子打ち)

 

お庭踊り(白山神社)

 

拝殿前の踊り(白山神社)

祭りの栞(トップ)

 

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