神事芸能(水無神社)

【祭礼日】5月1~2日
【場 所】水無神社(高山市一之宮町5323)

【日 程】1日〔試楽]19:00(神事芸能=絵馬殿前)、19:30(試楽祭=本殿)、2日〔本楽〕8:30(神事芸能当番挨拶=一之宮橋)、10:00(神事芸能=拝殿前)、10:30(本楽祭・発幸祭=本殿)、11:30(渡御出発)、12:40(御旅所祭・神事芸能=御旅所)、15:30(還御出発)、16:30~17:30(還幸祭=本殿・神事芸能=神門前)

水無(ミナシ)神社は古来より飛騨国一之宮で、5月の例祭では「神代(ジンダイ)踊り」「闘鶏楽(トウケイラク)」「獅子舞」が奉納されます。三つの芸能は「神事芸能」として国の選択無形民俗文化財に指定されています。

【神代踊り】神代踊りは「綾踊り」とも呼ばれる神事で、天平12年(740年)12月4日、聖武天皇が美濃国不破の宮へ行幸の際に奉納した「飛騨楽」に始まるともいわれています。

黒紋付羽織・着流し姿に角帯を締め、一文字笠を被り扇子(綾踊りでは綾)を持つ約40人が、警護役1人を中心にし大きな輪になって、音頭取りの歌に合わせて歌いながら手踊りします。

頭(カシラ)の音頭取り2人は一文字笠の代わりに褄折(チマオリ)笠を被っています。また「上臈(ジョウロウ)」と呼ばれる女装した4人は、若紫色の振袖姿に長い鳥の羽根を付けた花笠を被っています。警護役は裃姿に一文字笠を被り警護竹を持っています。

踊り歌には、白菅(シラスゲ)・寄れ寄れ・池田・天戸(アマト)開き・ひげ・綾の六曲に返し歌と中歌があり、音頭取りの歌に合わせて踊り手が返し歌を歌います。

【闘鶏楽】闘鶏楽は、建久4年(1193年)、鎌倉幕府より雅楽の楽人「多好方(オオノヨシカタ)」が飛騨国荒城郷(アラキゴウ)の地頭職(ジトウシキ)に任ぜられ下向した折りに秘曲神楽を伝えたものという伝説があり、飛騨地方の闘鶏楽は水無神社から広まったともいわれます。

鳳凰(リーダーの3人は市松模様)と龍を染めた白の着流し姿に角帯を締め一文字笠(二座太鼓1人は褄折笠)を被る約50人が、横一列に並ぶ警護役4人を中心にし大きな輪になって鉦・太鼓を打ちながら踊ります。

鉦打ちは首から吊るした鉦を左手に持ち撞木(シュモク)を右手に持ち、太鼓打ちは胸に太鼓を付け撥(バチ)を両手に持っています。警護役4人は裃姿に一文字笠を被り警護竹を持っています。

鶏頭楽の曲目は、入羽(イリハ)・からす飛び・中調子(ナカシラベ)・こうづか・打破・道行(ミチユキ)などです。

【獅子舞】獅子舞は、飛騨地方から富山県南部一帯に伝わる「振獅子」と伊勢大神楽系の伊勢神楽の二つが奉納されます。黒紋付袴姿に一文字笠を被る笛6人・締め太鼓4人の囃子に合わせて舞います。かつては「獅子芝居」も演じられていましたが現在は行われていません。

【神 紋】水無神社の神紋は、六つの瓢箪(ヒョウタン)を「水」の字に合せた形の「水瓢箪紋」で、神事芸能奉仕者が被る一文字笠・手に持つ扇子・帯に挟む手拭いなどに神紋が描かれています。

【行事の内容】本楽当日早朝、神社とJR飛騨一ノ宮駅の間を流れる宮川に架かる一之宮橋の上で神事芸能当番の挨拶が交わされた後、一行は神社に向かいます。拝殿前の広場で神代踊りの踊り手が大きな輪になって神代踊りを奉納します。

楽人(ガクジン)13人・巫女4人・献幣使・宮司などの本殿祭参列者が、神門前の祓所(ハラエド)でお祓いをした後、行列を組んで神門を潜り拝殿に入ります。行列が拝殿前の広場を通る間は、神代踊りの踊り手は踊りを中止し、輪になって片膝をつき神事参列者の通過を待ちます。

神事参列者が拝殿に入ると、神代踊りが再開されます。(神社内での神代踊りでは上臈は踊りに加わりません)

次に、同じ場所で獅子舞が奉納されます。笛・締め太鼓の囃子に合わせて二人立ちの振獅子1頭が勇壮に舞います。次に、伊勢神楽が舞われます。二人立ち獅子1頭で、前舞は胴幕を拡げ後舞は胴幕を絞り手に持って舞います。拝殿奥にある本殿では、本楽祭が行われています。

【神輿渡御】本殿祭の後、神様を本殿から神輿に移す発幸祭が行われます。神様が移された神輿が拝殿前に担ぎ出され、着流し姿に折編み笠を被り高下駄を履く1人が、参道入り口で空に向かって火縄銃を発射します。これを合図にして御旅所への神輿渡御が始まります。

渡御行列は、先祓い役の箒掃き2人・神水撒き2人を先頭にして、 神馬1頭・獅子4頭・囃子方・猿田彦・神代踊り・楽人・巫女・神職・闘鶏楽など200人を超す長い列になります。獅子舞の囃子方・神事の楽人・闘鶏楽の鉦・太鼓打ちがそれぞれ楽を奏しながら行列は御旅所に向かいます。

御旅所は宮川の対岸にあり、神社から西に3Kmほど離れた神楽岡と呼ばれる丘の上にあります。小一時間かけて御旅所に着き、御旅所の一角に神輿が安置されると神事芸能が始まります。

【御旅所での神事芸能奉納】神代踊りの踊り手が片膝をついて大きな輪を作り、その外側に闘鶏楽の踊り手が一段大きな輪を作り、鉦・太鼓を打ち鳴らしながら闘鶏楽を奉納します。踊りの輪の中央(神代踊りの踊り手の輪の中)には警護役4人が立っています。、

闘鶏楽が終わると、神代踊りの踊り手が立ち上がり、警護役1人を中心にして大きな輪になり神代踊りを奉納します。御旅所では、上臈4人も踊りの輪に加わります。

最後に、振獅子と伊勢神楽の獅子舞が奉納されます。伊勢神楽では、二人立ち獅子2頭の舞の後、一人立ち獅子1頭の舞も舞われます。獅子頭を被り絞った胴幕を背に垂らした前舞が、右手に鈴を左手に幣束を持って舞います。

神事芸能の奉納が終わると、神輿の前で御旅所祭が行われます。1時間ほど休憩の後、獅子舞・神代踊り・闘鶏楽の順で神事芸能が再び奉納されます。その後、御旅所発幸祭が行われ、再び行列を組んで神社に向かいます。

神社に着くと、神様が神輿から本殿に移される還幸祭が行われ、神門前の大きな広場では、闘鶏楽・神代踊り・獅子舞の順で神事芸能が奉納されます。神門前での振獅子は二人立ち獅子4頭で舞われます。

最後に、神門前でもう一度神代踊りが奉納され、9時間に及ぶ本楽の祭りが終わります。

 

   本殿祭の参列者(楽人)                 本殿祭の参列者(巫女・神職)

 

神代踊り(拝殿前)                        振獅子(拝殿前)

 

  伊勢神楽(拝殿前)                      火縄銃を発射(参道)

 

渡御行列(宮川の桜並木)                     渡御行列(振獅子)

 

渡御行列(獅子舞の囃子方)                     渡御行列(上臈)   

 

   渡御行列(神輿)                        渡御行列(闘鶏楽)

 

闘鶏楽(御旅所)

 

神代踊り(御旅所)

 

  振獅子(御旅所)                        伊勢神楽(御旅所)

 

警護役・鉦打ち頭・二座太鼓(神門前)             神事芸能奉仕者(神門前)   

 

  闘鶏楽(神門前)                        神代踊り(神門前)

  

  振獅子(神門前)                        伊勢神楽(神門前)

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