能郷の能・狂言(能郷白山神社)

【祭礼日】4月13日
【場 所】能郷白山神社(本巣市根尾能郷1222)

【日 程】13:00~15:00

能郷(ノウゴウ)白山神社は、養老2年(718年)泰澄(タイチョウ)大師が加賀国白山比咩神社より勧請して、能郷白山(標高1617m)の山頂に創建したと伝えられ、その後、本宮は村人のため麓の現在地に移されました。

「能郷の能・狂言」は、この白山神社の祭礼に能郷村の猿楽衆の家16戸によ って、 村内安全・家内安全・五穀豊穣を祈願し奉納されてきた神事芸能です。

かつて能郷には猿楽の家10戸、狂言の家6戸の特定の家筋があり、猿楽の家は、シテ・ツレ5戸、謡(ウタイ)2戸、笛1戸、鼓(ツヅミ)2戸の役割の家系まで決められ、口伝口授により世襲で伝承されてきました。

このため能郷の能・狂言は、室町時代に観阿弥・世阿弥により集大成される以前の能の源流が手を加えられず純粋な姿を残しているとして、昭和51年(1976年)国の重要無形民俗文化財に指定されました。

演じ方は今日の能とは異なり、シテは自身で謡うことはなく地謡(ジウタイ)方の謡に合わせて舞い、能の生命とされる「摺り足」はほとんどなく床を踏むように演じます。謡の節回しも強吟(ツヨギン)、弱吟(ヨワギン)の区別なく棒読み風で、狂言の所作も簡素で飾り気が少なく古式を伝えているといわれます。

昭和33年(1958年)には「能郷の能・狂言保存会」が結成され、役家だけではなく地区内からも奉仕者を募り伝承されています。

現在演じられている能の曲は、式三番・高砂・難波・田村・八島・羅生門の6曲、狂言は、百姓狂言(加賀越前・丹波淡路)・夷毘沙門・塩売り山伏・二人大名・なぞ狂言・鳥帽子折・粟田口・鐘引・鎮西八郎為朝の10曲です。

毎年、神社で奉納される曲は能・狂言あわせて7曲で、年により演目は変わります。新型コロナウイルス禍のため4年ぶりに開催された今年は、1.能:式三番(シキサンバ)、2.百姓狂言:加賀越前、3.能:高砂、4.狂言:なぞ狂言、5.能:田村、6.狂言:塩売り山伏、7.能:羅生門の順で奉納されました。

拝殿前に設けられた特設舞台は、2間四方の切妻屋根吹き抜け構造で、舞台左手に花道とされる橋懸りが設けられ、「丸に抱き柊(ヒイラギ)紋」と赤の「右三つ巴紋」が描かれた背景幕の後ろは楽屋になっています。

内容説明は、当日配布された資料を基にしています。能の地謡方は2人、囃子方は笛2人・小鼓(コツヅミ)1人・大鼓(オオツヅミ)1人です。

1.能 式三番(露払い・翁(オキナ)・三番叟)

  露払い 場を清める舞です。面を着けない直面(ヒタメン)の子供が、翁の面を納めた面箱を持って登場し面箱を置いた後、扇を持って舞います。(今年は子供ではなく大人が舞っています)

  翁   白式尉(ハクシキジョウ)を着けて村内安全・家内安全・五穀豊穣を祈願して舞います。最初に旧領主の徳山五兵衛の名前をあげて舞い、次に願主の名前をあげて一つずつ舞います。

  三番叟 冬の間眠っていた地霊を目覚めさせ地固めする舞で、最初は直面で扇を持って舞い、次に黒式尉(コクシキジョウ)を着け、扇と鈴を持って舞台の隅々を踏み鳴らしながら舞います。

2.百姓狂言 加賀越前 松を持つ加賀の百姓とゆずり葉を持つ越前の百姓が、京の二条の上堂様へ正月のお祝いに上る途中で出合い一緒に京に行きます。代官に挨拶をし、上堂様にお祝いの言葉を述べて、代官と百姓2人はめでたく歌い踊ります。

3.能 高砂(後段) 肥後国阿蘇宮の神主・宇治友成(ウジトモナリ)が播州の高砂の浦で高砂、住吉の松の精という老夫婦に会います。友成が大阪の住吉へ帰ると住吉明神が御本体を現し、御代万歳・国土安穏を祝う神舞を舞います。

4.狂言 なぞ狂言 権兵衛が上方(カミカタ)ではやっている「なぞ」というものを知り、仲良しの七兵衛を呼んで楽しみます。その問いかけが「ぎんがり二つの いわれはなんぞんぞ」「とんがり二つの いわれはなんぞんぞ」など妙なもので、その答えがみな「こっここれぞろよ」と決まっていて、 最後の問い「ほっそ一つの いわれはなんぞんぞ」だけが「メー」という答えで、「牛めのことじゃった」という落ちになります。今年の権兵衛役と七兵衛役を演じたのは親子だそうです。

5.能 田村(後段) 東国の僧が清水寺で満開の桜を見ていると童子が現れます。童子は、この寺は坂上田村麻呂(サカノウエノタムラマロ)が建てた寺だと伝え消えます。その夜、僧がお経を読んでいると田村麻呂の霊が現れ、鈴鹿山の鬼神退治の様子を話します。

6.狂言 塩売り山伏 昼飯を運ぶ「昼持ち」の女が昼飯を持って出かける途中、にわか雨にあい辻堂に休んで眠ってしまいます。そのあと辻堂に入ってきた塩売りも眠ってしまいます。 そこへやってきた山伏が女の昼飯を食べて、これをごまかすために塩売りの口に飯粒をつけます。目を覚ました女は昼飯を返せと言い 、塩売りと山伏はどちらも知らぬと言い張ります。

7.能 羅生門 京の九条の羅生門に鬼が住んでいて日が暮れると人を通さないと聞いた渡辺綱(ワタナベノツナ)はそのようなことはあるはずがないと言い張ります。その晩の明け方に綱が帰ろうとして羅生門に差し掛かると鬼が現れて兜(カブト)をつかんで引き止めます。綱は太刀を抜いて斬りかかり、鬼の片腕を斬り落とします。鬼はその後、出なくなり綱は勇猛な人として有名になりました。

 

       舞 台                                           地謡方と囃子方

 

能 式三番(露払い)

 

能 式三番(翁)

 

能 式三番(三番叟)

 

百姓狂言 加賀越前

 

能 高砂(後段)

 

狂言 なぞ狂言

 

能 田村(後段)

 

狂言 塩売り山伏

 

能 羅生門

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