真桑人形浄瑠璃(物部神社)

【祭礼日】3月第二土・日曜日
【場 所】物部神社(本巣市上真桑354-2)

【日 程】土曜日[試楽]19:00~22:00、日曜日[本楽]12:00~17:00

真桑(マクマ)は「まくわ瓜」の名産地として知られている地ですが、この真桑をふくむ旧本巣郡一帯は、古来、旱魃が続くとしばしば水不足が発生し、根尾川を水源とする席田(ムシロダ)用水と真桑用水を使用する両地域では水争いが絶えませんでした。

席田用水から取水するという不利な立場にあった真桑用水は特に深刻な状態でしたが、寛永年間(1624~1644年)に「渇水時には真桑用水側に12時間、席田用水側に18時間全ての水を流す『四分六分』の番水制」が定められました。この制度確立のために私財を投じて献身的な働きをしたのが、上真桑村の井頭(イガシラ)・福田源七郎(フクタゲンシチロウ)でした。

「真桑人形浄瑠璃」は、源七郎の遺徳に報いるため元禄年間 (1688~1704年) に「義農(ギノウ)源七郎」という外題(ゲダイ)の操人形芝居を上演したのがその創始と伝えられています。

毎年、物部(モノノベ)神社の春の例祭に奉納上演され、昭和59年1月21日に国の重要無形民俗文化財の指定を受けています。

「真桑文楽保存会」では物部神社の春の例祭奉納とは別に、平成30年(2018年)から毎年8月第二又は第三日曜日を「文楽の日」として、本巣市民ホールで真桑の人形浄瑠璃を上演しています。

新型コロナウイルス禍のため、物部神社の春の例祭奉納は今年は3年ぶりで、試楽・本楽とも演目を一つずつ少なく縮小して行われました。

試楽では、外題「三番叟(サンバソウ)」・「絵本太功記十段目 尼崎の段」が、本楽では、外題「三番叟」・「傾城(ケイセイ)阿波の鳴門 順礼歌の段」・「真桑誉(ホマレ)義農源七郎 水争いの段・初真桑の段」・「壺阪霊験記(ツボサカレイゲンキ) 山の段」・「千秋楽」が奉納上演され、今回は本楽を見学しました。

三味線の伴奏で「大夫(タユウ)」が物語を語るのが浄瑠璃で、浄瑠璃に合わせて人形を操るのが人形浄瑠璃です。浄瑠璃の名の由来は、15世紀中頃に生まれ広く流行した牛若丸と浄瑠璃姫の恋物語の主人公の名前によるとされています。

真桑人形浄瑠璃を演ずる舞台は物部神社境内の一角にあり、間口七間(約13m)、奧行五間(約9m)の木造瓦葺き建物で、昭和50年9月3日に国の重要有形民俗文化財に指定されています。観客席の天井にはテントが張られていますが吹き抜けの構造です。

真桑人形浄瑠璃の人形は、頭と右手を遣う「主遣い」と、左手を遣う「左遣い」、足を動かす「足遣い」の三人遣いで、三味線と大夫の語りに合わせて演じられます。三味線と大夫は外題ごとに交代します。

【外題の内容】

1.三番叟 

三番叟は、能の「翁(オキナ)」で、千歳(センザイ)・翁に次いで三番目に出る老人の舞で、真桑人形浄瑠璃では、神事芸能として人形芝居上演の最初に演じられます。大夫の語りは無く、笛・鼓・拍子の囃子とともに三人遣いのうちの主遣いが謡いながら演じます。

2.傾城阿波の鳴門 順礼歌の段 

傾城阿波の鳴門は、阿波徳島藩のお家騒動を描いた歴史物で、10段で構成されていて「順礼歌の段」は8段目です。

(あらすじ)藩のお家騒動に絡み主君の宝「国次の刀」が何者かに盗まれ、家老桜井主膳の命で十郎兵衛は刀を取り戻すために、幼い娘おつるを祖母に預け妻お弓とともに名を変え、盗賊に身をやつして大坂に移り住んでいました。大坂の家でお弓が一人でいたところへ巡礼姿の女の子が訪ねてきます。お弓は言葉を交わすうち、徳島に残してきた娘のおつるだと分かります。おつるを危険に巻き込まないために名乗らず国元に帰るよう諭しますが、おつるが去った後に思い直しておつるの後を追います。8段目の物語はまだ続きますが、真桑人形浄瑠璃はここで終わります。

3.真桑誉義農源七郎 水争いの段・初真桑の段

水争いの段(あらすじ) 源七郎が真桑用水側と席田用水側との水争いを解決するために奔走します。

初真桑の段(あらすじ) 「四分六分」の番水制の合意を幕府裁定とするために源七郎が江戸に旅立ちます。2ヶ月が過ぎても夫からの音沙汰がなく、我が子の病が悪化するのを苦にした女房が子とともに命を絶とうとしたところへ源七郎が帰ってきます。源七郎は幕府裁定が成就したことを告げ、折しもこの日は御瓜の幕府献上の日で、村人が源七郎の子に一切れのまくわ瓜を与えると子は元気になります。源七郎は、路銀の足しにと女房から預かりながらも、使わずに持ち帰った先祖伝来の櫛を女房の髪に挿して返すと、女房は涙を流して喜びます。

4.壺阪霊験記 山の段

壺阪霊験記は、西国三十三箇所の一つ第六番札所の大和・壺坂寺の霊験を題材にして、明治時代に作られた浄瑠璃で盲人とその妻の夫婦愛を描いた世話物です。

(あらすじ) 座頭の三味線弾きである沢市は妻のお里が暁七つ (午前四時)になると出掛けていくのに気付き妻を問い詰めます。お里はこの3年間、沢市の目が治るようにと壷阪寺の観音様に願掛けに行っていたと打ち明けます。邪推を恥じた沢市はお里とともに壺坂寺へお参りにでかけます。観音堂に着くと、沢市は三日間断食をすると言いお里は家に帰ります。一人残った沢市は、目があく望みはないと悲観して谷へ身を投げます。そうとは知らず帰って来たお里は、断崖の上に残された杖と谷底の沢市の死体を見つけ、形見の杖を抱きしめて同じ断崖から身を投げます。夜もふけて観音様が崖の上に現れます。観音様はふたりの深い信心により命を助け目もあけてやると告げます。夜が明けた谷間に沢一とお里は起き上がり、ふたりは命が助かり沢市の目が開いていることに驚き喜び、萬歳(めでたいときの踊り)を舞います。

5.千秋楽

舞い納めの謡が謳われ、最終場面の人形(今回は壺阪霊験記山の段の沢市とお里)が扇を持って舞います。

 

人形浄瑠璃の舞台                                                    三番叟

   <傾城阿波の鳴門 順礼歌の段>   

 

         大夫・三味線                                          おつるがお弓の家を訪れる  

 

おつるが父と母の名を告げる                            おつるに国元に帰るよう諭す

 

おつるが暇乞いする                                       お弓がおつるを追う

<真桑誉義農源七郎 水争いの段・初真桑の段>

 

大夫・三味線                     村 人 

 

                 村 人                                      源七郎が女房に旅立ちを告げる

 

女房が我が子を殺そうとする                              獅子頭を被り源七郎が帰る

    

まくわ瓜を子に食べさせる                                 源七郎が女房に櫛を返す

<坪坂霊験記 山の段> 

 

              沢市とお里                                   お里が壺坂寺への願掛けを勧める

 

        沢市が谷に身を投げる                           お里が谷底に沢市の死体を見つける

 

お里が杖を抱いて身を投げる                                      観音様が現れる        

 

お里と沢市が生き返る                                   沢市の目が開き喜び踊る

<千秋楽>

 

お里と沢市が扇を持って舞う

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