沓見の御田植祭(信露貴彦・久豆彌神社)

【祭礼日】5月5日
【場 所】信露貴彦神社(敦賀市沓見62-12)・久豆彌神社(敦賀市沓見75-8)

【日 程】12:00(男宮の行列が沓見公会堂出発)、12:30(女宮の行列が沓見公会堂出発)、13:00(王の舞・獅子舞・御田植=男宮)、14:20(王の舞・獅子舞・御田植=女宮)、16:20(王の舞・獅子舞・御田植=男宮)、17:10(御幣合わせ=馬場)

「沓見(クツミ)の御田植祭」は、沓見の氏神である信露貴彦(シロキヒコ)神社と久豆彌(クツミ)神社との合同の例大祭で奉納され、「王の舞(おのまい)」と獅子舞も合わせて奉納されます。

御田植祭は、昭和62年(1987年)から15年間中断し、平成15年(2003年)に復活後は毎年斎行され、平成20年(2008年)、県の無形民俗文化財に指定されました。かつては御田植祭が過ぎないと田植えをすることができなかったと伝えられています。

【男宮と女宮】信露貴彦神社と久豆彌神社はともに創建は古く、延長5年(927年)に纏められた「延喜式神名帳」に記載される神社「式内社」です。

信露貴彦神社は、祭神が「瓊瓊杵命(ニニギノミコト)」と「日本武尊(ヤマトタケルノミコト)」であることから「男宮」と呼ばれ、久豆彌神社は、祭神が「木花開耶姫命(コノハナサクヤヒメノミコト)」・「瓊瓊杵命」・「大山衹命(オオヤマツミノミコト)」であることから「女宮」と呼ばれています。

【オハケと御幣】祭礼日の前日に、当屋である沓見公会堂前に設けられた瑞垣(ミズガキ)2基の中に「オハケ」2本と「御幣」2本が立てられます。

オハケは長さ5mほどの竹の先端に多数の奉書紙を飾ったもので、御幣は長さ4m余の丸棒の先端に16枚の扇子を円形に3層重ねし、その上の4層目の中央に2枚の扇子を並べたもので、大振りの紙垂(シデ)も付いています。

御幣の最下層に置かれた扇子8枚のうち7枚の縁は黄(男宮)・赤(女宮)に彩られ、もう1枚は日の丸扇子です。2層目・3層目の扇子各4枚には、子供たちが稲穂・野菜・鶴・松などの絵を描いています。4層目に並べ置かれた2枚の扇子の色は、男宮は青、女宮は赤です。

オハケと御幣は、土で台形に盛られた縦横1m・高さ40cmほどの瑞垣の中に打ち込まれた竹杭にまとめて縛られています。瑞垣は竹矢来に囲まれ、この中には山幸(蕨など)・海幸(昆布)の神饌2組が置かれています。

【宮への行列】時間になると瑞垣の中の御幣に巻かれた縄が解かれ男宮の行列が、警護・五色旗・榊・神職・「カイゴ船」(神饌)・ソトメ(早乙女)・王の舞・獅子舞・太鼓負い・太鼓打ち・笛方・御幣差し・エブリ差し・苗打ち・添え差しなどの順で男宮に向けて出発します。

神饌はカイゴ船と呼ばれる大型の足付き木箱の中に納められ、これを裃姿の2人が頭に載せ、木箱下部に取り付けられた足を両手で持ち慎重に進みます。

ピンクの小袖を着けたソトメ4人は、左手に黒の笠を持ち、右手に振袖姿の女児又は黒紋付袴姿の腰に刀を差す男児の手を引いています。行列の後方では笛・太鼓の囃子が奏されます。

太鼓負い1人は締め太鼓を負う着物姿の子供、太鼓打ち1人は裃姿の大人、笛方数人は紺の着流し姿、御幣差し2人は小袖・袴姿に引立烏帽子(ヒキタテエボシ)を被っています。

最後尾に位置し直垂(ヒタタレ)姿に引立烏帽子を被る「添え差し」が、「ヤッホーハイヤー、来年もトーヤ再来年もトーヤ」(来年も当屋をしたい、再来年も当屋をしたいの意)と叫び続けます。

男宮の行列が出発した30分後には、女宮の行列が女宮に向けて出発します。女宮の行列には、御幣の左側に立てられていた長さ5mほどの「御剣」が先頭に就くそうです。

【奉納行事】男宮の行列が男宮に着くと、拝殿で最初に王の舞、次に獅子舞、最後に御田植の神事が奉納されます。演者は本殿に向かって左側に座ります。

王の舞は、青の素襖(スオウ)姿で頭に鶏兜を戴き顔に鼻高面を付けた子供が、紙垂を付けた鉾を持ち舞います。鉾は、紺の長着姿の子供が蹲(ウズクマ)るようにして舞手に渡したり受け取ったりします。二人立ちの獅子舞も子供2人が演じます。

御田植の神事は、黒の素襖姿に立烏帽子(タテエボシ)を被る歌方5人が、本殿に向かって左右の両側に分かれて立ち「田植歌」を歌います。次に、歌方と同じ衣装で「エブリ」を持つ1人が田を均す所作をし、別の1人が稲苗に見立てた杉の枝を持ち「苗打ち」(田植え)の所作をします。この時にも歌方がエブリ・苗打ちの歌を歌います。

奉納行事が終わると直会が行われます。裃姿の2人が演者に御神酒を盃に注ぎ、三方(サンボウ)に盛られた御飯を配ります。拝殿外にいる祭り奉仕者にもカイゴ船を担いでいた裃姿の2人が三方に盛られた御飯を配ります。御飯はそれぞれが手に持つ扇子で受けてから食します。

男宮での行事がすべて終わると、男宮の演者・奉仕者は行列を組み直して女宮に向かいます。出発に先立って獅子舞が舞われます。舞うといっても2度飛び上がるだけです。

女宮に着くと、拝殿で男宮と女宮の王の舞・獅子舞・御田植の神事が奉納されます。本殿に向かって右側に女宮の演者、左側に男宮の演者が座り、王の舞・獅子舞・御田植の神事のいずれも交互に、男宮が先に奉納した後、女宮が奉納します。田植歌だけは両宮がそろって歌います。

奉納行事が終わると男宮と同じように直会があり、演者と拝殿外にいる祭り奉仕者に御神酒・御飯が振る舞われます。

その後、両宮がそろって男宮に向かい、男宮では女宮だけが王の舞・獅子舞・御田植の神事を奉納します。男宮の拝殿に通ずる石段下には両宮の御幣が、それぞれの御幣差しの手によって奉納行事が終わるまで真っ直ぐに立てられます。

奉納行事が終わり奉仕者が石段下に集まると、両宮の添え差しが「ヤッホーハイヤー、来年もトーヤ再来年もトーヤ」と叫びます。

【御幣合わせ】この後、両宮の行列が馬場(ばんば)へ向かいます。馬場手前に土盛りされた場所がありここに御幣を立て、笛・太鼓の囃子に合わせて獅子舞が舞われます。

馬場に着き両宮の御幣が合わされると、これを見守っていた見物人が一斉に両宮の御幣紙を奪い合います。御幣紙はその年の無病息災と豊作の御利益があるとされています。

 

  沓見公会堂                            神饌の昆布と山菜

 

      カイゴ船                         男宮へ向かう男宮の行列

 

王の舞(男宮)

 

      獅子舞(男宮)                       田植え歌の歌方(男宮) 

 

エブリ差し(男宮)                         苗打ち(男宮)

 

     直会(男宮)                       女宮へ向かう男宮の行列

 

     王の舞(女宮)                       田植え歌の歌方(女宮)

 

 エブリ差し(女宮)                         苗打ち(女宮)

 

              直会(男宮)               来年もトーヤ再来年もトーヤ

 

     笛 方                              獅子舞(男宮)

 

 王の舞(女宮)                          獅子舞(女宮)

 

      獅子舞(女宮)                      御幣紙を奪い合う(馬場)

 

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