王の舞(彌美神社)

【祭礼日】5月1日
【場 所】彌美神社(三方郡美浜町宮代10-25)・麻生八幡神社(三方郡美浜町麻生20-37)

【日 程】5:00(王の舞の舞人と当屋施主が参詣=彌美神社)、6:00(王の舞=麻生八幡神社)、8:00(村立ち=麻生八幡神社)、8:20(御膳奉献=以後すべて彌美神社)、9:40(幣招き)、10:00(祭典・乙女の舞)、11:00(幣迎え)、12:00(幣押し)、14:00(浦安の舞)、16:15(幣納め)、16:30(王の舞)、17:30(獅子舞)

彌美(ミミ)神社の祭神は、第九代開化天皇の第三皇子「日子坐王(ヒコイマスノキミ)」の子「室毘古王(ムロビコノキミ)」で、古事記で「室毘古王者、若狭之耳別(ミミワケ)之祖」と記され、彌美神社旧耳庄(ミミノショウ)の総鎮守となっています。

5月1日に行われる彌美神社の例大祭は、耳川上流の大日原(ダイニチハラ)の「ヨボ(リョウブ)の木」に金の御幣が天降り、この御幣をお祀りしたのが彌美神社という故事に因んで行われる祭りで、この中で「幣招き」「幣迎え」「幣押し」などの行事とともに「王の舞(おのまい)」が奉納され、特殊神饌の「御膳」が供えられます。

【役割分担】祭りに参加するのは旧耳庄に属する耳川流域の18集落で、行事の役割は次のように分担されています。

1.王の舞=麻生(アソ)と東山。(麻生が4年の後、東山が1年)

2.獅子舞=野口・佐野・上野(ウワノ)の3区による1年の年交替です。

3.一本幣と七本幣=新庄(シンジョ)。(金幣が降ったとされる大日原がある地区)

4.大御幣=干支年によって担当区が定められています。(子=中寺、丑=興道寺、寅=河原市(カワハライチ)、卯=佐柿、辰=宮代、巳=興道寺、午=河原市、未=佐柿、申=小三ケ(安江・五十谷(イサダニ)・寄戸)、酉=興道寺、戌=和田、亥=坂尻)今年は寅年で河原市が担当します。

5.小幣と御膳=各区が毎年それぞれ作ります。(新庄は一本幣と七本幣があるので小幣は作りません)

6.浦安の舞・乙女の舞=浦安の舞は新庄が、乙女の舞は南市(ミナミイチ)が担当します。

【各御幣の内容】

1.一本幣=長さ7尺のヨボの木1本を幣串とした御幣で、紙垂(シデ)を八枚垂らし先端に奉書紙を挟んでいます。

2.七本幣=長さ7尺のコブシの細木7本を束ねて幣串とした御幣で、細木1本につき紙垂を2枚ずつ垂らし先端に奉書紙を挟んでいます。

3.小幣=長さ1mほどのヨボの木を3本・5本・7本(本数は地区により異なる)束ねて幣串とした御幣で、ヨボの木1本につき紙垂を2枚ずつ垂らし先端に半紙で包んだ洗米を付けています。

4.大御幣(オオゴヘイ)=長さ6尺のヨボの木を削って幣串とし、檜を枠木として「申」の字の形に作ります。上段の長さは5尺・下段の長さは4尺3寸で、中段は上下の中間に合わせています。上・中・下3段の横木に3枚重ねの紙垂100枚を貼っています。

【幣差し】幣を持つ人を「幣差し」といいそれぞれの幣に幣差しが付きます。一本幣と七本幣は、紺の素襖(スオウ)姿に青の襷を掛け侍烏帽子(サムライエボシ)を被る大人2人が持ちます。

小幣はそれぞれの区の小学生の男児が持ちます。男児は広袖の着物に袴姿です。

大御幣の幣差しは「大御幣差し」と呼ばれ、広袖の着物に袴姿の小学生の男児です。大御幣に付き添うだけで、実際には20数人の大人の「幣持ち」が大御幣を交替して持ちます。幣持ちは、白の上下衣に吉祥文様を染めた襦袢を羽織り白の地下足袋を履いています。

【祭礼の前日】各区ではそれぞれ御幣と神饌の御膳を作ります。御膳は、鳥居・日・月・斧・鎌・稲穂などの様々な形に作られた餅細工の神饌を足付折敷(オシキ)に載せたものです。

麻生では、王の舞の舞人は付人とともに和田の海岸に出向き禊ぎをします。御膳を作り終えると麻生の当屋(集落センター)に向かって王の舞が一舞されます。15時から夕方まで集落センターで祝宴が催され、17時、麻生八幡神社で王の舞が一舞されます。

【祭礼の当日】早朝、王の舞の舞人と当屋施主は彌美神社に参詣した後、麻生八幡神社で王の舞を一舞します。麻生では、8時に麻生八幡神社から村立ちし列を成して彌美神社へ向かいます。同じ頃、各区も村立ちし彌美神社へ向かいます。行列には、御膳に付き添う「女郎」と呼ばれる華やかな振袖姿の女児も加わります。

彌美神社に到着すると到着順に御膳を本殿に供え、それぞれ持参した小幣は能舞堂の柱に設けられた横木に立て掛けます。大御幣は、拝殿に向かい先端を水平に倒して縦に振り上げる所作を3回繰り返します。着到の挨拶のようです。

【幣招き】拝殿前で大御幣と一本幣・七本幣の幣招きが行われます。拝殿に向かって大御幣を持つ幣持ちが、大御幣をゆっくりと水平に倒した後、右左に振り真ん中に戻し上へ振り上げて元の形に戻ります。これを3回繰り返します。

大御幣の横に並ぶ大御幣差しと後方の左右に位置する小幣を持つ幣差しも大御幣の動きに合わせて同じ所作をします。幣招きを終えると大御幣は参道下の馬止めに移ります。

次に、一本幣と七本幣の幣招きが行われます。拝殿に向かって右に一本幣、左に七本幣が並びます。一本幣は金の御幣を表す祭神(室毘古王)で、七本幣は一本幣の警護役で室毘古王率いる耳別の一族を表わしているともいわれます。

二人の幣差しはそれぞれ御幣を垂直に捧げ持って、そろって足踏みしながら三歩前に進み元に戻ると、御幣を地面に触れないように水平に倒し左・右・左に大きく振った後、真ん中に戻し上へ振り上げて元の形に戻ります。これを3回繰り返し、幣招きを終えると能舞堂の横木に御幣を立て掛けます。

大御幣と一本幣・七本幣の幣招きが終わると、本殿で式典が催され白衣・緋袴姿の舞姫4人が榊の枝を持って「乙女の舞」を奉納します。その後、「幣迎え」が行われます。

【幣迎え】一本幣に宿る神を大御幣に移す儀式です。一本幣と七本幣が拝殿に向かって左に一本幣、右に七本幣が並びます。幣招きとは左右逆の位置で、幣招きと同じ所作を繰り返します。

その後、一本幣と七本幣を垂直に捧げ持つ2人は、参道下で待ち受ける大御幣に向かって一足長(イッソクチョウ)でゆっくりと参道を下りて行きます。この後ろに羽織袴姿の新庄の関係者・裃姿に一文字笠を被り警護竹を持つ警護役20人・各区の小幣・王の舞・獅子舞が続きます。

王の舞の舞手は、赤の着流し姿に角帯を締め着物の下に「ダテサゲ(伊達下げ)」と呼ばれる赤の前垂れを着け、肘まである白の手袋を着け白の足袋を履いています。頭には鳳凰を模した鳥兜を戴き、顔には赤の鼻高面を付けています。腰帯の左側に白の紙を挟み後腰には守り刀と扇子を差し、手には長さ6尺の鉾を持っています。

王の舞の舞手には付人としての師匠・幣差し2人・警護役が付き、その後ろでは紺の着流し・羽織姿の笛吹き6人・太鼓打ち1人の囃子方が囃子を奏しています。

獅子舞は二人立ちの獅子ですが、行列の時には獅子頭を持つ1人が別に付きます。獅子舞にも2人の幣差しが付いています。

先頭の一本幣と七本幣は、大御幣の前まで来ると大御幣に向かって左に一本幣、右に七本幣が並び対峙します。

大御幣がゆっくりお辞儀するように下げられるのに合わせて一本幣・七本幣も水平に下げられ、お互い地面スレスレのところまで下がると「よいしょ」という威勢のいい掛け声とともに両方の幣が勢いよく上に差し上げられます。これを3回繰り返します。これで大御幣に神が移ったことになります。

一本幣と七本幣は幣迎えが終わると、来た時と同じように一足長でゆっくりと参道を引き返し拝殿に向かいます。

次に、左右に東山と麻生の幣差しを従えた王の舞の舞手が鉾を持って鼻高面を天に向けます。これを「拝む」というのだそうです。この時、左右の幣差しは舞手の拝むの所作に合わせて小幣を水平に下げます。これを3回繰り返します。今回は、幣差しの1人は裃姿に一文字笠を被る大人でした。

次に、左右に幣差しを従えた獅子が口を大きく開けて「歯打ち」をします。獅子が口を開けた時、左右の幣差しは小幣を水平に下げます。これを3回繰り返します。

【幣押し】王の舞と獅子舞の一行はそれぞれ幣迎えが終わると、ゆっくりと歩む一本幣・七本幣の行列の後ろに続きこうとします。

ところが獅子の幣迎えが終わるとたちまち、大御幣を本殿に納めようとする幣持ちの「上げ番」とこれを阻もうとする「下げ番」の攻防が始まり、双方に揉まれた大御幣が王の舞と獅子舞の行列の中に入り込んだりしますが、一本幣と七本幣の行列を乱したり追い越すことは許されていません。

上げ番と下げ番の攻防は、幣持ちの人が入れ替わり立ち代わりして12時から4時間以上も参道で延々と続きます。その間に、幣串に取りつけられた枠と紙垂は散り散りバラバラになり大御幣は幣串だけになってしまいます。

その最中の14時には、白衣・緋袴姿に千早を羽織り前天冠を被る舞姫4人が、拝殿で扇と鈴を持って「浦安の舞」を奉納します。

【幣納め】一進一退を繰り返しながら、幣串だけとなった大御幣は拝殿への10数段の石段に至りこれを上下していると、幣持ちの肩に担がれた大御幣差しが拝殿前に現れ手に持つ日の丸扇を翻します。

この合図により幣串だけの大御幣は石段を上り切り、幣持ちにより幣串に馬乗りにさせられた大御幣差しは、拝殿を三周し大御幣は本殿に納められます。

【王の舞】その年の豊作を祈願する舞で笛と太鼓の囃子に合わせて、前半は鉾を持って「拝む」「種蒔き」「地回り」「犁(スキ)起こし」「鉾返し」のあと、種蒔き・地回り・犁起こしを繰り返します。後半は鉾を幣差しに預け、素手で「肩のしょう」「腰のしょう」を舞います。

50分におよぶ優雅な舞いが終わると、神から人間に戻った舞人は長床(控え所)で紋付羽織姿に着替えて本殿に参拝した後、人目を避けて急いで麻生区の集落センターに戻ります。

【獅子舞】前後左右に跳躍する勇壮な舞で眠りの型もありますが、口取りの制止を振切って暴れたりします。最後に拝殿に至る石段を3段まで上って舞い納めます。囃子は麻生区が担当し、笛・太鼓による王の舞の曲を奏します。

獅子舞が終了すると、各区が午前中に本殿に供えた御膳がそれぞれ返却されます。その際、御膳に載せられた餅細工・御神酒などの供物は、全て半分になって返却されます。半分は神霊が受け取り残りの半分を氏子集落が受け取ることになっているのだそうです。

 

幣招き(一本幣・七本幣)                       神事(祓所)   

 

           乙女の舞                      参道下へ向かう(一本幣・七本幣)

 

 参道下へ向かう(王の舞)                  参道下へ向かう(獅子舞)

 

幣迎え(一本幣)

 

幣迎え(一本幣)

 

 幣迎え(王の舞)                        幣迎え(獅子舞)

 

幣押し(参道下)                           浦安の舞 

 

 各区の女郎                              各区の小幣

 

         幣押し(拝殿前)                 幣納め(幣串に大御幣差しを乗せる)

 

王の舞

 

獅子舞

 

  半分になった御膳(河原市区)                半分になった御膳(興道寺区)

 

祭りの栞(トップ)

 

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