河内の花祭り(長峰神社)

【祭礼日】11月最終土・日曜日
【場 所】長峰神社(北設楽郡東栄町三輪字杉13)

【日 程】土曜日18:00~日曜日10:00

花祭りは、鎌倉・室町時代に熊野の山伏や加賀白山の聖によって天竜川水系の里に伝えられたとされる神事芸能で、北設楽郡東栄町で11ヶ所、豊根村で3ヶ所、設楽町で1ヶ所、合計15ヶ所で花祭りが行われています。

「河内(コウチ)の花祭り」は、明治初年の神仏分離令を受けて祭りの形態を「神道花」として変容させたため、「中設楽(ナカシタラ)の花祭り」と同じように神道色が強いことが特徴です。

主役の鬼の名前は、山見(ヤマミ)鬼・榊(サカキ)鬼・茂吉(モキチ)鬼ではなく、須佐之男命(スサノオノミコト)・大国主命(オオクニヌシノミコト)・猿田彦命(サルタヒコノミコト)のように日本神話に出てくる神様の名前になっています。また演目に「岩戸明(イワトアケ)」・「大蛇(オロチ)退治」も入っています。

【舞庭(マイド)】本殿前の広場に、4本の横木と斜交いに差し渡された2本の丸太で支えられた4本の丸太が立ちこの中が舞庭になります。4本の横木の下に張られた注連縄には、俗界と神聖な場所との結界を示すものとして「切り草」と呼ばれる白の切り絵32枚(8枚×4本)が付けられています。

舞庭の中央には、直径10cm、長さ1mほどの3本の丸太で組まれた上輪五徳に釜が据えられています。釜の上には「湯蓋」と呼ばれる1辺が2mほどの正方形の飾りとその周囲に「一力花」と呼ばれる花が20ヶほど飾られています。舞庭の上部は白一色で神道系の花祭りであることをよく表しています。

屋外の吹きさらしの舞庭なのでとても寒いです。4年前に見学した時には、置かれている石油缶に自分で薪をくべながらとても寒い思いをしたので、今回は少し厚着して来ましたがそれでも明け方は厳しいです。

舞のほとんどは、それぞれ40~50分連続して舞います。3人で舞う三ツ舞、4人で舞う四ツ舞では、最初、笛・太鼓の囃子方がいる「神座」の前と釜の四方で横一列に並んで舞い、次に、神座の前で円陣を組んで扇・矢知(ヤチ)・太刀などの採り物を外側に向けたり内側で合わせたりして舞い、次に釜を周回しながら舞い、最後に神座の前で並んで舞います。採り物や足の捌きが複雑で3人4人が揃って舞うには練習が欠かせません。

【行事次第】

1.宮渡り、2.しめ降ろし、3.桴(バチ)の舞、4.式三番、5.天の祭り、6.地固めの舞(扇)、7.湯の舞(扇)、8.湯の舞(湯桶)、9.願主の舞(須佐之男命)、10.湯の舞(扇子)、11.地固めの舞(矢知)、12.湯の舞(鍬)、13.願主の舞(須佐之男命)、14.三ツ舞(扇)一力、15.湯の舞(榊)、16.須佐之男命、17.三ツ舞(矢知)一力、18.地固め(太刀)、19.三ツ舞(扇)、20.願主の舞(榊)、21.岩戸明、22.三ツ舞(矢知)、23.櫛稲田姫、24.大蛇退治、25.三ツ舞(太刀)、26.願主の舞(須佐之男命)、27.四ツ舞(扇)、28.大国主命、29.四ツ舞(矢知)、30.猿田彦命、31.四ツ舞(太刀)、32.朝鬼、33.湯囃し、34.花そだて、35.神返し、36.鎮め

1.宮渡り 塩・洗米などを持った宮人2人を先頭にして、大太鼓を担いだ少年や祭り道具を持った子供たちが参道から舞庭に入り釜を周回します。

2.しめ降ろし 袖口を黒く染めた白の羽織に袴を着け烏帽子を被った太夫と宮人約10人が、釜の前で祭文を唱えます。

3.桴の舞 宮人の1人が、釜の前に敷かれた筵の上で両手に桴を持って舞います。

4.式三番 神座に敷かれた筵の上で、3人の宮人が一人ずつ右手に鈴を左手に扇を持って舞います。

5.天の祭り 釜の前に敷かれた筵の上に八足台が置かれ、この上に塩・水・榊の葉を載せた三方(サンボウ)と太刀一振り・榊の枝が置かれています。太夫が榊の葉に含ませた水と塩で釜・神座・神部屋などを祓い清めます。次に、筵の上で太刀を抜いて舞います。

6・11.地固め 薄花色地に柄模様の上衣と裁着袴(タッツケバカマ)姿に白の半纏を羽織り白の鉢巻きを締めた2人が採り物(扇・矢知)を持って舞います。

7・8・12・15.湯の舞 桃色の小袖・赤の袴姿に白の袖無しを着け花笠を被り、右手に鈴を左手に採り物(扇・湯桶・鍬・榊)を持った幼児3人が舞います。

16.須佐之男命 薄花色地に柄模様の狩衣(カリギヌ)・緑の袴姿の須佐之男命が榊の枝を持って、先導役2人の持つ松明に導かれて釜を数回周ります。(13・20・26番でも、「願主の舞」として同じように舞います)

19・22・25.三ツ舞 薄花色地に柄模様の上衣と裁着袴姿に、赤の襷と白の鉢巻きを着けた3人が採り物(扇・矢知・太刀)を持って舞います。扇の舞では白の半纏を羽織ります。

(この他に14・17番で、自分だけの舞を舞ってもらう趣旨の「一力(イチリキ)」の舞として、三ツ舞(扇・太刀)が舞われます)

21.岩戸明 禰宜(ネギ)・ひのねぎ・天鈿女命(アメノウズメノミコト)・おかめ・ひょっとこが、列をなして釜を3回周ります。

24.大蛇退治 榊の枝を持った須佐之男命と白の格衣(カクエ)・赤の袴姿に天冠を被り鉾を持った櫛稲田姫(クシイナダヒメ)が登場した後、茶の胴幕に2人が入った大蛇が釜を周回しながら釜の五徳に足を掛け大酒を飲む所作をし筵の上で横になり寝ると、須佐之男命が鉾で大蛇を退治し大蛇の腹から草薙の剣を取り出します。

27・29・31.四ツ舞 三ツ舞と同じように4人が採り物(扇・矢知・太刀)を持って舞います。

28.大国主命 紫の装束で槌を持つ大国主命と白の装束で鉾を持つ伴鬼が、先導役2人の持つ松明に導かれて釜を周回した後、槌と鉾を打ち合いします。最後に、大国主命と伴鬼がそろって釜の上の湯蓋を突く所作をします。この頃には舞庭も明るくなっています。

30.猿田彦命 神座前に敷かれた筵の上に、願主の名前と「健康祈願」と書かれた紙が置かれます。先導役2人の持つ松明に導かれ白の狩衣・水色の袴姿の猿田彦命が榊の枝を持って登場し、次に榊の枝を鉾に持ち替えて、願主の紙を足で踏み付けたりしながら鉾を振り上げて舞います。次に、釜の下で燃やされている薪の火を鉾で跳ねます。

32.朝鬼 鉾を持つ赤装束・白装束の鬼と槌を持つ青装束の鬼が、釜を周回しながら鉾と槌を打ち合った後、釜の上の湯蓋中央にある「蜂の巣」をそろって突っつきます。蜂の巣が割れると大量の五色紙とともに「種銭」が落ちてきます。皆さんすかさず種銭を取り合います。これを拾って財布に入れておくとその年はお金に不自由しないといわれます。

33.湯囃し 薄花色地に柄模様の上衣と裁着袴姿に白の鉢巻きを締めた4人が、藁で作ったタワシを持って釜を周回しながら50分ほど舞った後、タワシを釜の湯に浸し勢いよく振り回して観客に湯を掛けます。この湯を浴びると一年間健康で過ごせるといわれます。

湯囃しの後、釜の上の湯蓋を降ろしてこれを1人の宮人が頭上に掲げ持って釜を周回する「花そだて」や「神返し」・「鎮め」が行われますが、湯囃しが終わったのが11時で、バスの時間の都合で残念ながら最後まで見届けることなく帰りました。

 

宮渡り

 

しめ降ろし                              桴の舞

 

式三番                              天の祭り

 

地固めの舞(扇)               湯の舞(扇)

 

   湯の舞(湯桶)                       地固めの舞(矢知)

 

 湯の舞(榊)                            須佐之男命

 

地固めの舞(太刀)                          三ツ舞(扇)

 

 岩戸明(ひのねぎ)                       岩戸明(天鈿女命)

 

三ツ舞(矢知)                          櫛稲田姫  

 

    大蛇退治                             三ツ舞(太刀)

 

四ツ舞(扇)                             大国主命

 

四ツ舞(矢知)                           猿田彦大神

 

四ツ舞(太刀)                            舞庭の全景

 

             朝 鬼                      朝鬼が蜂の巣を突く

 

湯釜に落ちた種銭と五色紙                          湯囃子      

 

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