須成祭・朝祭(冨吉建速神社・八劔社)

【祭礼日】8月第一土・日曜日
【場 所】冨吉建速神社・八劔社(海部郡蟹江町須成字門屋敷上1363)

【日 程】土曜日[宵祭]20:00~22:00、日曜日[朝祭]9:00~11:30

「須成(スナリ)祭」は「須成天王祭」ともよばれ、冨吉建速(トミヨシタケハヤ)神社の主祭神である「素盞鳴尊(スサノオノミコト)」(牛頭天王)に疫病退散を祈願する天王信仰に由来する祭りです。

天文17年(1548年)に織田信長が牛頭天王社(冨吉建速神社の旧社名)の社殿を修復した際に、「夏六の祭典退転これなき様に致すべく」と命じたといわれ400年以上続く祭りで、愛知県の無形民俗文化財に指定されています。

須成祭は、人々の穢れを植物の葭(ヨシ)に託して川に流す「御葭(ミヨシ)神事」と「巻藁船(マキワラブネ)」・車楽船(ダンジリブネ)」が出る「川祭」から成り、旧暦6月1日から旧暦9月9日(現在は七月初旬から三ヶ月余)に亘って諸行事が行われるため、「百日(ヒャクニチ)祭」とも呼ばれています。

祭りの中心となる行事は8月第一土曜日の「宵祭」と翌日の「朝祭」です。(かつては旧暦6月17日が宵祭、翌18日が朝祭でした)

宵祭では、7月下旬に隣町の津島市津島神社で行なわれる「津島天王祭」と同じような、檜の柱に月数をあらわす12個、半円の山には1年の日数の365個の提灯をともした巻藁船が、蟹江川を飾橋(カザリバシ)から天王橋まで上ります。

そもそも須成祭は、その昔、須成の若者が芋の葉をかぶって深夜須成から海を渡り、津島天王祭で流した葭を持ち帰ったことに始まるといわれています。

朝祭では、巻藁船の提灯を取り払い「高砂人形」と呼ばれる翁(オキナ)・媼(オウナ)の人形2体を乗せた車楽船が、宵祭と同じように蟹江川を上ります。今回はこの朝祭を見学しました。

車楽船は平行に並べた二艘の船に板を渡し一艘の船とし、その上に二階造の屋形と三階部分に屋台を設けた三層構造で、屋形には稚児・囃子方などが乗り、屋台には梅花・桜花と呼ばれる花の枝と高砂人形を飾ります。船の舳先には2本の高張提灯が立てられます。

稚児は6人いてそのうちの2人は、緋の着物姿に椿と梅の花で飾った山吹色の烏帽子を被り、着物の長袖には錦糸の絵が描かれています。稚児は神の化身とされているようです。

他の2人は、緋の着物姿に舟形の山吹色の烏帽子を被り、楽では大鼓(オオツヅミ)を打ちます。他の2人は、ベージュ色の着物姿に舟形の山吹色の烏帽子を被り、楽では太鼓を打ちます。太鼓は2人が交替して1人で打ちます。

稚児6人にはそれぞれ「親役」・「傘さし」・「団扇あぶち」(稚児の座布団を担ぎ稚児を大団扇で扇ぐ役)が1人ずつ付きます。太鼓打ちの稚児以外は、大人の肩に担がれて移動します。

当日朝9時、御葭橋(ミヨシバシ)袂にある宿の須成公民館から稚児と親役などが行列を組んで飾橋に向かい、橋の袂に停泊している車楽船に乗り込みます。また、祭り三役と呼ばれる祭り総代・宿大将・車大将も他の奉仕者とともに船に乗り込みます。

車楽船はすぐに動き出し、船の屋形では稚児の4人が大鼓と太鼓を打ち、裃姿の若者2人の吹く笛とともに「祭り囃子」を奏します。船は、船頭役3人が長い竹棹を操って600mほど上流の天王橋に向かいます。

途中、鉄橋の御葭橋がありますが、1年のうち須成祭の宵祭(巻藁船)と朝祭(車楽船)の2回だけ橋の半分を跳ね上げて、祭り船を通過させてくれます。須成祭のために跳ね上げることが出来る橋を造ったというのですから驚きです。

1時間余りかけて車楽船が天王橋に着くと、「山乗り」など数人を除く全員が橋の袂にある冨吉建速神社の拝殿に入ります。拝殿では稚児と笛方により「天王囃子」が奏されます。

天王囃子が終わる頃、車楽船では羽織袴姿の山乗りが、梅花・桜花の枝を堤防にいる見物人に向けて投げます。「投げ花」という行事で、この枝を家に持ち帰り飾ると夏病みをしない、雷が落ちないなどといわれます。

梅花は、紅白の紙を花形に切り抜いたものを榎の木に付けたもので、桜花は、円形に切った薄紙を四つ折りしその先をピンクに染めこれを紙縒り(コヨリ)で柳の木に付けたもので、ヨモギ色の葉と実も付いています。

冨吉建速神社での天王囃子の奉納が終わると、一行は再び車楽船に乗り込み御葭橋手前の船着き場で上陸して朝祭は終わります。

 

   稚 児                              大鼓打ちの稚児

 

飾橋から天王橋へ向かう車楽船                 祭り囃子を奏する(車楽船)

 

 御葭橋を通過する車楽船                    天王囃子を奏する(神社)

 

梅花・桜花の枝を投げる                      ゲットした桜花の枝

 

    神社から車楽船に向かう稚児             神社から車楽船に向かう太鼓打ちの稚児

 

         車楽船(天王橋)                 高砂人形(天王橋) 

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