亀崎の潮干祭(神前神社)

【祭礼日】5月3~4日
【場 所】神前神社(半田市亀崎町2-92)

【日 程】3日(初の日)8:50(山車曳き出し)、10:20(海浜曳き下ろし)、12:00(人形技芸披露=祭り広場)、14:00(人形技芸奉納=秋葉社)、16:40(人形技芸奉納=尾張三社)、18:20~20:00(町内巡行後、サヤ納め)

4日(後の日)6:00(山車集合=尾張三社)、9:00(警護行列集合・神楽奉納=尾張三社)、10:40(人形技芸奉納=尾張三社)、14:00(海浜曳き下ろし)、14:50(山車曳き回し=神前神社前)、16:30(人形技芸奉納=神前神社前)、18:00~19:30(町内巡行後、サヤ納め)

亀崎の潮干祭は江戸時代中期から300年余続く祭りで、山車の海浜曳き下ろしが最大の見所となっています。昔は、山車が通れる神前(カミサキ)神社への道がなかったため、干潮時間に海浜を通って神社に参拝したのが山車の海浜曳き下ろしの始まりだそうです。

1959年の伊勢湾台風後の護岸整備により海浜曳き下ろし行事は中断されましたが、1993年人工海浜が完成し海浜曳き下ろしが復活しました。今年は5月1日に令和に改元、新天皇が即位されたので山車には「奉祝 天皇御即位」・「祈願 天下泰平」の2本の垂れ幕が掲げられていました。

今回は「後の日」の御旅所(尾張三社)での人形技芸奉納・海浜曳き下ろし・神前神社前での山車曳き回しまでを見学しました。初の日と後の日の海浜曳き下ろし開始時間は、潮の干満時間により毎年変わります。気象庁の潮位表によれば、5月4日の衣浦の干潮時刻は11:44、満潮時刻は17:58でした。

【山 車】当地では山車を「やまぐるま」といいます。山車は全部で5輌あり、組ごとに山車の名前が付けられています。東組が宮本車、石橋組が青龍車、中切組が力神車、田中組が神楽車、西組が花王車で、山車の並び・巡行・人形技芸奉納ともすべてこの順番で決まっています。

山車の重量は約4トンで、ゴマと呼ばれる車輪は、内輪式で四輪あり車輪の幅は30cmほどあります。山車の高さは6m余もあり重心が高いので巡行時に倒れないように、山車の両側面から出る各2本のローブにそれぞれ数人が付いてバランスを取ります。

【人形技芸】御旅所で神楽奉納の後、人形技芸が奉納されます。御旅所となる尾張三社はホテルルートインの西隣にあります。尾張三社とは奇妙な名前ですが、尾張地区にある津島神社の素戔嗚尊(スサノオノミコト)・熱田神宮の日本武尊(ヤマトタケルノミコト)・尾張国一之宮である真清田(マスミダ)神社の天火明命(アメノホアカリノミコト)の三神を祭神とするので尾張三社と名付けられたようです。

人形技芸は、胴山と呼ばれる山車の一階部分で前棚人形のからくりが行われます。演目は、宮本車は三番叟、青龍車は布ざらし、力神車は猩々、神楽車は巫女の舞、花王車は石橋獅子です。宮本車の三番叟だけは、からくりではなく3人の子供たちが操る隠れ使いです。

この後、上山(ウワヤマ)と呼ばれる山車のニ階部分で上山人形のからくりが奉納されますが、「後の日」の御旅所で奉納されるのは青龍車の唐子遊びだけです。

【山車の巡行】人形技芸が終わると秋葉社手前まで巡行します。まず神社関係者が、塩振り・警護・「奉祝 天皇御即位」「祈願 天下泰平」の幟・神社幟・太鼓・伶人(楽奏)・神輿・稚児・役員の順で行列を組んで出発し、その後ろに5輌の山車が続きます。

山車の胴山には囃子方が乗り、上山の高欄には子供たちが乗っています。曳き手・梶方・囃子方など一同は、腹掛け・半股引に揃いの組看袢(カンバン)を羽織り、手甲・脚絆を着け白足袋・草鞋を履いています。(梶方は組看袢は羽織っていません) 大人から幼児まで同じ衣装です。祭りは今も女人禁制です。

山車の2本の梶棒の前後にはそれぞれ3~4人の梶方が付いて、山車の方向転換時に梶方が梶棒に肩を入れ、「ヤマイッ」・「ハマイッ」と叫んで調子を合わせる掛け声が特徴的で面白いです。これは「山へ」・「浜へ」と叫んでいるのだそうです。

【海浜曳き下ろし】干潮でアオサが見えていた海浜も潮が満ちてきて白砂だけとなる頃、一番山車の宮本車の海浜曳き下ろしが始まりました。ゴマ(車輪)が海砂に埋もれる山車を70~80人の曳き手が声を揃えて所定の場所まで曳き摺ります。

最後の花王車になると潮がさらに満ちてきて曳き手は膝まで海水に漬かり、山車も海中を渡ることになります。すでに山車を曳き終えた他の組が応援に駆け付け曳き綱は組看袢の花が鈴なりに咲いたようになります。もう少し長い望遠ズームを持ってくれば良かったと悔やみました。

5輌の山車がきれいに縦列整列すると、山車は順番に海浜から曳き上げられ、その都度通行止めされた国道247号線を渡り神前神社前の広場に入ります。

【神社前での曳き回し】神前神社前の広場に入った山車は広場を三周した後、神社真正面に向けられ拝礼しその後、国道側に整列します。各組の整列が終わるとその都度50~60人の若者が神社への石段に鮨詰めに座り手拍子で歌い大いに盛り上がります。

最後の花王車の曳き回しになると、他の組の若者が三周で終わらせないように曳き綱の先頭の方向を変えようとして大荒れに荒れます。毎年恒例のことのようです。結局花王車は五周廻ったかと思います。予定より1時間ほど遅れて5輌の山車が整列し終えると長めの休憩の後、人形技芸が始まります。

【余 話】人形技芸の見学をやめてJR亀崎駅に向かう途中、中切組会所の入口脇に、「令和2年潮干祭まで365日」のカウントダウンを告知する張り紙を見掛け、潮干祭への意気込みを感じました。その先の歩行者天国になっている交差点の真ん中では、休憩時間を利用して各組の若者30~40人が大きな車座になって盛大に飲み会をしていました。

午前中、神前神社から御旅所に向かって国道を歩いていると前方に組看袢を羽織り大きなポリ袋を持って歩いている7~8人の集団を見かけました。何をしているのかと思ったらゴミを拾い歩いているのでした。

そういえば100軒を優に超える屋台が出ているにも拘わらず周囲にゴミひとつ見かけなかったのはこの人たちの努力と、町のあちこちに設けられた分別ゴミ置き場(1ケ所ごとに9個の分別ゴミ入れの大袋が並んでいます)のおかげでしょう。清潔を保ち祭りを盛り上げる町の人々の努力に敬服です。

亀崎の山車は、祭りが終わった翌日解体してサヤに保管し、翌年の4月下旬の日曜日に一から組み上げます。こうすることによって山車の組み上げ技術が伝承されていくのだそうです。ここにも亀崎の潮干祭の心意気が感じられます。

 

御旅所整列曳き出し(宮本車)                       宮本車(三番叟)     

 

青龍車(布ざらし)                             力神車(猩々)

 

神楽車(巫女の舞)                          青龍車(唐子遊び)

 

 曳き手(神楽車)                                梶方(神楽車)

 

      梶切り(青龍車)                          海浜曳き下ろし(宮本車)

 

海浜曳き下ろし(花王車)                          山車海浜整列    

 

神前神社前曳き廻し(青龍車)             神前神社参拝(神楽車)          

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