鳥羽の火祭り(鳥羽神明社)

【祭礼日】2月第二日曜日
【場 所】鳥羽神明社(西尾市鳥羽町西迫89)

【日 程】15:00(みそぎ行列神社出発)、15:30(みそぎ=鳥羽海岸)、19:30(神事=神社本殿)、20:00~20:30(火祭り=神社境内)

「鳥羽の火祭り」は鳥羽地区で行われる正月行事で、燃え上がる「すずみ」と呼ばれる大松明の中から「神木(シンギ)」と「十二縄(ジュウニナワ)」を取り出し て神前に供える速さを競い、その勝ち負けや松明の燃え具合いなどでその年の豊凶や天候などを占います。

祭りの起源は約1200年前とされ、かつては旧暦1月7日に行われていましたが、昭和45年(1970年)からは2月第二日曜日に行われています。今年は、新型コロナウイルス禍で3年ぶりに行われました。

【祭りの組織】祭りは、神明社の西にある「宮西川」を境に東側を「乾地(カンジ)」、西側を「福地(フクジ)」とし地区を二分して行われます。行事は、神明社の氏子の中から選ばれた9人の「宮役」が中心となって執行されます。宮役は2年交代で宮役の中から「宮総代」1名が選ばれます。

祭りの中心的な役割を務める「神男(シンオトコ)」は、乾地・福地の25歳(現在は原則扱い)の若者からそれぞれ1名ずつが選ばれます。神男は、翌年「添え棒」として神男を補佐し指導します。

【すずみ】すずみは、長さ12尺(閏年は13尺)の青竹を扇形に並べ、縄で7~8段を編んで簾(スダレ)状にし、その上に茅(カヤ)を敷き芯に神木を置き、この茅と神木を竹の簾で簀巻きしてロープで締めたものです。神木は、枝が付いた長さ2mほどの「トチノキ」です。

さらにすずみの2ヶ所(上から1/3と下から1/3の場所)に藤づるが巻かれます。上の藤づるは「一の藤」、下の藤づるは「二の藤」と呼ばれています。

すずみの根元には1年の月数を表す 「十二縄」 が巻かれます。 縄は2本1組で平年は12巻き、 閏年は13巻きとされています。

すずみの上部には「飾り茅」が付けられ、飾り茅には先端に御幣を付けた篠竹2本を挿します。すずみの全体の高さは16尺(約4.8m)、重さは2トンにもなります。

祭りの前日に乾地と福地がそれぞれ1基ずつすずみを作り、祭場まで皆で担いで運び、神男と添え棒が掘った穴に立てられます。祭り当日は風がなく穏やかな日でしたが、昨日は風がビュウビューと吹く中で、早朝から14時まですずみ作りをしたそうです。

【みそぎ】祭りの奉仕者は社務所で晒し木綿の腹巻と下帯姿に着替え、鉢巻を締め白足袋を履き、14時、神明社の提灯を先頭にして4人ずつ肩を組んで「ワッショイ、ワッショイ」と声を掛けながら1Kmほど南にある鳥羽海岸に向かいます。

その人数は100人余で、列の先頭は神男2人・添え棒2人の4人で、福地(西)の神男が、先端に幣を付けた長さ6~7mの竹竿を持ちます。

一行は海岸に着くと神職のお祓いを受けた後、列を組んで海中に入ります。遠浅の海岸で且つ潮が引いてるのでみそぎができる場所は100mほど先になります。

地元の方の話では、神男と添え棒は首まで海水に浸かり、その他の奉仕者は膝まで浸かり潮垢離(シオゴリ)をするのだそうです。

みそぎの最後に、福地(西)の神男が竹竿に付けられた御幣を海の中へ投げ落とし、乾地(東)の神男がこれを拾い上げます。この時、御幣は洗い流されて竹竿だけになっています。みそぎが終わると、奉仕者は再び列を組んで浜に戻ってきます。浜では焚き火がたかれています。

奉仕者が輪になって取り囲む中で、神男と添え棒は下帯を取り替えます。その後、奉仕者は列を組んで神社に戻り解散し休憩します。

【火祭り】みそぎ行列の最後尾について神社に入ると、火祭りの祭場はすでに大勢の見物人に囲まれています。16時半頃、消防団がすずみの周りの木に消防用のホースで水を掛けます。2基のすずみを見下ろす後方の位置で待つこと3時間。本殿で神事を済ませた30数人の奉仕者が、高張提灯・宮司・塩振り役などに導かれて入場します。

奉仕者は、神社の古い幟を生地にして作った胴着・ズボン・頭巾という独特な衣装を身に着け地下足袋を履き、ゆすり棒2本・当て棒2本・払い棒2本などを手に持っています。

ゆすり棒は、長さ4~5mの黒松の棒の先端を円錐形に尖らせもので、先端に点火用の藁束を挿しています。神男と添え棒が持ちます。

当て棒は、枝葉付きのモチノキで、火を消すときに使います。払い棒は、ヤマザクラの枝で火の粉を払う時に使います。

奉仕者はすずみの前まで進むと、塩振り役が手掴みして撒く塩を頭から浴びて身を清めます。次に、火打石から起こされた火がゆすり棒の藁束に移され、神男と添え棒が藁束の火をすずみの飾り茅に点火します。

飾り茅の火はたちまちすずみ本体に燃え移り、一の藤に火が燃え移る頃合を見計らって「一の棒」の太鼓の合図があり、神男と添え棒がゆすり棒をすずみに挿し込んで揺さぶりすずみを燃えやすくします。他の奉仕者は、水を頭から被ってすずみに架けられた梯子によじ登りすずみを揺さぶり、火の粉を浴びて梯子から飛び降りたりします。この姿から奉仕者は「ネコ」と呼ばれています。

すずみの半分ほどが燃えると「二の棒」の太鼓の合図があり、二の藤まで火が移ると「三の棒」の太鼓の合図があり、燃え上がる火の中から神木と十二縄を取り出そうとします。神木の枝が青竹などに引っ掛かり神木は容易には取り出せません。

神木と十二縄が取り出されると、直ちに神男の関係者がゆすり棒を担いでまっしぐらに神男の家へと運びます。神男を務めた証しとするのだそうです。

神木と十二縄を取り出しこれを組み合わせて神前に早く供えた方が勝ちとされています。 福地(西)が勝てば雨にも恵まれて豊作となり、 乾地(東)が勝てば干天が続いたり異変が起こるといわれています。また、すずみの一の藤(4月)、二の藤(8月)の燃え具合を見て、 煙が多ければ雨がち、 竹の爆ぜる音が激しいと雷が多いといわれます。

火祭りの様子は、祭場の後方から見学したので垣間見る程度で写真もうまく撮れませんでした。すずみの正面から見て右側の方が神木と十二縄を速く取り出したようで、隣の地元の方に勝敗を確かめると今年は乾地(東)が勝ったそうです。

帰り際に祭場の方を見ると、消防団員が鳶口(トビクチ)ですずみの残り火をかき回し整えています。その傍らで少女が、黒くなった燃え残りの青竹を手にしています。燃え残った竹を持ち帰り、箸を作り食事をすると歯の病気にかからないといわれています。

 

みそぎのため海に向かう

 

お祓いのあと海に入る                                          遠浅の海を進む   

 

             潮垢離をする                                   神男・添え棒が下帯を取り替える

 

                 すずみ                                       すずみの周りの木に水を掛ける

   

     ゆすり棒                               当て棒          

 

                    払い棒                                           すずみの飾り茅に点火する       

   

梯子に登りすずみを揺さぶる                       二の藤まで燃えるすずみ             

 

ゆすり棒を担ぎ神男の家へ運ぶ                              火祭りを終えたネコたち   

 

         すずみの残り火を整える消防団                    すずみの竹を手にする少女

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